「戦略的TPM」で新しいものづくり革新を―経営戦略とリンクする総合一貫型のTPMとは― No.9

「戦略的TPM」で新しいものづくり革新を―経営戦略とリンクする総合一貫型のTPMとは― No.9

第9回 S-TPMメニュー解説編 「ビジネス開発管理」「ビジネスプロセスリーン開発管理」

 コラムの第1~3回で新しいTPMのフレームワークを、第4回では17メニューの「組織価値&戦略革新」「経営&指標管理革新」を、第5〜6回目で「事業継続&総資産管理革新」「顧客満足&営業革新」を、第7〜8回で「購買調達革新」「プロセス統括革新」「サプライチェーン革新」を紹介しました。これら革新活動は従来の業務基盤からスタートしているが、従来の枠から大きく発展した要素が組み込まれています。これらの着眼点を活かして各機能からの切り口で経営革新を実現していくべきです。
 さて今回は、製品開発管理の本質的見直しを新しい従来のビジネスモデルだけでなく、広い意味での新製品・新サービス・新ビジネスも含めた範囲で新製品開発管理を考えてみます。S-TPMではそれを新たに「ビジネス開発管理」と名づけます。売れる商材・サービス、ひいては伸びるビジネスモデルの変革を目指す活動です。同様に、設備開発管理が出発点となりますが、「ビジネスプロセスリーン開発管理」と名づけた活動もあります。これは新しいビジネスを考えるときに従来の自前の工場や設備の開発を前提に考える必要はがなく、もっと広い視野でMake or Buyの選択肢も含めた視野で考えるための活動です。ムダのない新たな発想でのプロセス開発を行うための取り組みとなります。
 ただし、従来の製品開発管理と設備開発管理も重要で、その充実や革新も図らなければならないため、従来の8本柱の中にも位置づけておくことにします。

ビジネス開発管理

■ビジネス開発管理の必要性

 まず、ビジネス開発管理を必要とする背景を説明しておきます。
 これまでの多くの現行ビジネスが売上の向上を目指すように、製造側はQCD向上のため日々の努力重ねてこの上ない改善を継続し、生産性を向上させています。そこそこの領域までは改善され、売価を下げるレベルで売上の向上に貢献していることでしょう。しかし、需要そのものはそのくらいの値引きで支えられるものではなく、製品ライフサイクルの寿命は、ほとんどの場合、図1のようにどんなに隆盛を誇ったとしても、いつかは減衰期を迎えます。であるならば、現行商材が減衰期を迎える前に、常に新製品・新ビジネスを考えて次の商材を成長期に持っていくことで、会社として大きな売上減少を食い止めることができるわけです。

図1 製品ライフサイクル

図1 製品ライフサイクル
製品ライフサイクル

 しかし、矢継ぎ早に次から次へとヒット商品を生み出せるわけではありません。どう考えたらよいでしょうか、ここが悩みどころです。各企業ではさまざまやり方を実施していることでしょう。カリスマ的な指導者がいてその人のセンスに頼ることができたり、かなり優秀なマーケティング部門を持っていてヒット商品を次から次へと提案してくれたりすれば、それはそれで会社としてはありがたいものです。しかし、現実はそううまくいかないものです。
 ここでは、カリスマがいなくても誰でも取り組めることを紹介します。現行商材をベースにそれを「小魚」として育てた後、「大魚」として仕上げる方法です。これをもとに自社の新しいビジネスを立ち上げるやり方(ビジネス開発管理)を見直してください。放っておくとどんどんビジネスは萎んでいく宿命にあります。
 図2にビジネス開発管理の必要性をまとめました。

図2 ビジネス開発管理の必要性

図2 ビジネス開発管理の必要性

 まず、現行ビジネスでのさまざまな売上向上策を実施します。それらの総合的生産性の向上(製造部門の継続的改善)により、コストダウンや品質向上、納期短縮を図ります。しかし、生産性向上の限界に近い努力をしても、今の製品のままでは市場で売上向上は限界に達します。もちろん、例外はあります。たとえば、顧客ニーズから現行商材の類似商品や派生商品の依頼があり、たまたま他の商材が育つこともあります。しかし、通常は現行商品だけでは製造部門がいくら努力しても、徐々に売上が落ちていく宿命にあります。現行商材が売れているときから常に他のニーズに対応する新しいビジネスを立ち上げて、新しい売上の道を探っていく視点と仕組み(ビジネス開発管理)を持っておくことが、市場での勝ち負けに左右します。

■ビジネス開発管理とは

 ビジネス開発管理とは「従来の従来のビジネスの伸び悩みを払拭して、新しい発想で売上向上につなげるビジネス開発をすること」です。
 新しいビジネスとは新製品や新サービスを売ることでもあるし、従来の製品・サービスの上・下流の業務を取り込むことでもあります。製造販売にこだわらず、サービス業務に切り替えたり、それも含んだり、インターネットでの販売・サービスにも広げたりすることも、これに当てはまります。これらをまったく新しい分野で実施しようとすると、ハードルが高く尻込みしてしまうかもしれません。しかし、現行の製品やサービス回りから少しずつ広げていくと、サプライヤーや現況の取引状況から情報を得られるので、実施しやすくなります。

■ビジネス開発管理の考え方

 図3に示したビジネス開発管理の活動体系をもとに、その考え方を紹介していきます。

図3 ビジネス開発管理の活動体系

図3 ビジネス開発管理の活動体系

①現行売上商材の現状把握
 ここでは現行商材をつくっている材料や部品などの上流プロセスを見ます。サプライヤーの状況やそのサプライヤーのどういう部品や材料が多く売れているのか、最近の動向も含めて情報を集めます。また、自工程でのつくり方や工法の変更も含めて、現状の問題点や発展の可能性について新たな視点から調べてみます。自社で実施できないため外注している工程、それらの間の荷姿や物流も調査します。自社から顧客へ出荷していれば、その顧客や顧客の顧客およびその製品の使われ方を調べます。競合の類似品や顧客の製品や顧客の使い方を見て、さらに改善すべきことを見極めて、現行の向上策の限界と構造的弱点を洗い出していきます。

②競争力の確認
 自社の実力が競合に対してどのくらいの力を持っているか、競合と比較してどのくらいの競争力があるかを確認します。とくに同類の製品で売れている商材の仕様、売れる結果を生むスペックやサービスを調査し、自社がそれを超えることができるかどうかを、しっかりと確認する必要があります。ただし、多少スペックを上回る製品特性を実現して市場に提供したとしても、顧客が自社に選んでくれるための労力は甚大になるうえに、転注してくれる保証もありません。このレベルのささいな競り合いは割が良くないのです。そこで、次のステップが必要となります。

③現ビジネスモデルからの変革検討
 モノをつくって売った対価として代金をもらう(モノ売りビジネスモデル:ビジネスモデルとはお金のもらい方)ことだけにとらわれないでください。現ビジネスモデルからの変革として、モノのより良い活用方法を支援するコンサルティングや使用後の回収サービスなどで代金をもらうなど、いろいろな商材サービスで新しいタイプのビジネスによる代金回収を考えてほしいのです。もちろん、あくまで「ビジネス」なので多くのアイディアからしっかり利益のあるビジネスモデルを選択することが大事です。

④レベルアップへのロードマップ策定
 ③でさまざまなビジネスのネタが生まれたとしても、やみくもに思いついたものを次から次へと実施しても、その分イニシャルコストがかかるだけで儲けになりません。すべての評価尺度に利益率を据えて、利益率50%以上を稼げるネタだけを残し、他はあえて実施しないでおきます。不採用のアイデアはストックしておき、何かの状況変化や追加の工夫で大化けするのを待てばよいのです。とはいえ、最初から何もしないで50%以上の利益率になるネタが転がっているはずもありません。「筋の良いネタ」を育てて売上を上げつつ、原価を圧倒的に下げる必要があります(これは後述します)。筋の良いネタを絞りつつ売上を上げる検討をし、原価を下げて粗利を50%以上に仕立てていく——このレベルアップのための実行計画(ロードマップ)をつくるのです。

⑤新しいビジネスの実施
 ④に従った新ビジネスを立ち上げて実施します。新ビジネスとはいえ、まったく見ず知らずの業界で始めるより、既存商材の周辺から広げることでリスクを減らし、確実な展開を図るようにします。これらが軌道に乗れば、次々と商材や領域を増やして、次ステップに進みます。

⑥事業への発展貢献
 継続的に次の世代を担う新商材・新ビジネスが立ち上がる仕組みづくりを意識する必要があります。この段階では、従来にない新ビジネスが1つ立ち上がり、これまでにない新製品開発の動きもできていることでしょう。しかし、商材や従来ビジネスが時間とともに隆盛を失うことは必然のことです。「新ビジネスを起こすこと」を組織の仕組みとして具備しておく必要があります。

⑦新規ビジネス対応力の蓄積
 これは⑥を仕組み化するために日頃から実施しておくべきことです。日常業務の中には新ビジネスのネタが数多く潜在しています。それらのヒントをうまく拾い上げる機能と仕組みをルーチン業務の中に入れていくことが、このステップの要です。そのためには、専任の部署を創設するより営業や開発の実務を遂行しながらネタを掘り起こす、つまり兼務であっても定期的にそれぞれの立場の職場の人がプロジェクティブにミーティングする形で進める方が成果を出しやすくなります。また、営業や開発の統括役員にも指示できる人の責任下で進めることも重要です。日常業務に追われて活動がおろそかになってはいけないし、営業に寄り過ぎても開発に寄り過ぎてもいけません。

⑧新しいニーズの兆候モニタリング
 現顧客や現顧客以外のマーケットから新しいニーズの兆候を継続してモニタリングする機能と仕組みをつくります。そのためにマーケティング部門や営業部門が連携して、これまでと違ったビジネス開発管理の考え方で、定期的にミーティングを開き、組織的なアウトプットを出し続けていくことが大切です。

⑨新規ビジネスの継続上市
 これは、⑦⑧の結果の集大成となります。コツは現行ビジネスの周辺から新ビジネスを発掘することです。日頃のルーチン業務の近くで着想しようとすれば情報が収集しやすいし、協力チャネルも見つかりやすくなります。ただ注意しなければならないのは、あまりに慣れてしまって新しい発想や着眼が出にくくなっていしますことです。そのときは新人や部外者を巻き込んで、新たな発想が生まれる工夫が必要となります。

■ビジネス開発管理の進め方

 ここまでで「考え方」を理解していただけたと思います。ここでは図4をもとに、具体的に10のステップによる「進め方」を解説していきます。

図4 ビジネス開発管理の進め方

図4 ビジネス開発管理の進め方

ステップ1:現状の新ビジネス開発管理の悪さ加減のBM取り
 現状の新製品の上市率やそのヒット率および粗利など、企業の屋台骨になり得る新しいビジネスが健全に立ち上がっているかどうかを、少ないKPIでその実力を把握できるBM(ベンチマーク)が必要となります。ここでは製品初期管理の悪さをモニタリングするわけではなく、もっと大所高所から見た企業の繁栄を支える収益の柱づくりのビジネスモデル革新が健全に進行しているかを、しっかりと直視して悪さを洗い出せることをねらっています。
 図5に示したのは、自社が既存商材、既存顧客・市場である第1象限中心でしかビジネスを実施していないことがわかるなど、たいへん有効な分析手法である。

図5 自社の商材とビジネスを伸ばしていく方向性を検討する「4象限分析」

図5 自社の商材とビジネスを伸ばしていく方向性を検討する「4象限分析」

 第1象限に集中しているターゲットを、まずそのままの商材で売れる顧客や市場を探し、即売上向上につなげることを目指します。たとえば、現顧客の競合にも補間しあえる品揃えゾーンがないか、エリアがないかなど、強み弱みを詳しく分析すれば道が開ける可能性があります。いかに幅広く売っているように見えても、浸透してないカテゴリーがあるかもしれません。
 たとえば、個人向けの赤ちゃん用オムツがあったとします。病院や託児所用として入数やパッケージを変えたり、定期配送サービスなどの付加価値を追加したりすることで、新たに開拓できることも多いはずです。今まで売ってなかった領域を攻めてみてください。
 第3象限は、製品や販売スタイルを少し変える必要が生じ、従来の製品や事業を変えて従来の顧客や市場に売る場合です。顧客の困りごとに対応することで、顧客に支持されることをねらうのです。オムツを例にすると、オムツに必須なお尻拭きや消臭剤の入ったゴミ袋のセット販売、オムツそのものを無臭タイプにするなど、ちょっとした付加価値をつけることで既存顧客・既存市場でもまだまだ伸ばす余地は見つかるものです。投入する製品やその売り方で迷ったり、細かな仕様が決められなかったりするときは、既存顧客に相談したり使ってもらったりすることができるので、かなり安心感のある挑戦ができます。
 第4象限は、第2・第3象限で工夫したことを活かして、新商材、新市場に挑戦する領域となります。これまでのノウハウが蓄積されれば、新しい商材を新しい市場に売り込むシナリオは容易に描くことができます。たとえば、赤ちゃん用オムツから花束(コサージュ)などの延命保水包みなどが発想できるようになります。

ステップ2:全体のビジネス開発管理のフローの見直し
 最近の新製品もしくは新ビジネスの立ち上げプロセスをモデルトレースします。具体的には、直近の実際の製品や新ビジネスの立ち上げプロセスを棚卸してフロー図にして記述します。これにより、生々しい実態を洗い出すことができます。マイナーなものから過去最大のヒット事業など、規模やレベルなど案件によって大きく違うパターンになるので、うまくいった場合とそうでない場合について代表的なものをケーススタディとしてフローにしておいてください。

ステップ3:小ネタ発掘選定(小魚開発)
 小ネタとは、大きい商材になり得る現行商材のことです。これが育つと小魚になり、最終的には大魚に育つことを目指します。
 小ネタの見つけ方の参考事例として、図6に示しておきます。

図6 企業と顧客のゴールのシンク2ロ化図法

図6 企業と顧客のゴールのシンク2ロ化図法

 現在の商材がものをつくって売る、いわゆるモノ売り型のビジネスモデルだとします。図6では、仕入れステージから製造・流通・販売ステージまでです。その中で自社のビジネススコープが、ものづくりだけだとすると、製造ステージの舞台しか踏まないことになります。ステージを多く踏めば利益を生む機会も増えますが、個々のステージを他社に依存していると、その分の利益を喪失している可能性があります。もちろん、下手なやり方でステージを回すとかえって損失を出してしまうので、一概に自前主義を推奨しているわけではありません。得意なステージに集中特化することで、大きな利益を享受できるステージに集中すべきことを言いたいのです。
 ここでさらに主張したいのは、「従来のビジネスがものづくりだったからといって、ものづくりだけのビジネスで考えていては将来の発展は限られる」ということです。とくに前後のステージで事業を成り立たせている事業者がいるということは、そのステージにもビジネスチャンスがあるということです。もちろん、そのステージを企画実施するにあたっては、そのQCDを評価するとともに、粗利が多く上がるか否かを慎重に揉んでからの話になります。また、競合の商材やサービスおよびビジネスを見ながら、どの商材でどのようなステージで戦えば優位に立つか、それにより利益が多くなる商材とビジネス(小ネタ)があるか、を細かく検討する必要があります。
 最近のヒット商品の開発では、「もの売り」から「こと売り」を目指すべきだと言われています。これは図6の顧客ステージを細分化し、期待達成ステージを期待以上に上回るシーンを創造できるかどうかで成否が決まります。詳述はまたの機会に譲りますが、自社もしくは企業ステージから顧客ステージ(B to C,B to Bともに)全体をつなぐストーリーで考えて、顧客満足を圧倒的に高めるビジネスの創造が成功の扉を開くのです。

ステップ4:収益性創造(粗利50%確保)
 小ネタが小魚に成長するために必須のステップです。新しく立ち上がる商材ですから、「売価を高くできるか」「原価を安くできるか」「爆発的な数が売れるか」など、いくつもの方策を考え、圧倒的な粗利を得るということから「50%以上」を目指します。
 商材やマーケットが成熟してくると、粗利はどんどん落ちていく傾向にあります。せめてスタート時点くらいは、高い利益率を獲得できる立ち位置で開始すべきです。本来は利益率が10%程度になったら終売して、次の看板商品に乗り換える戦略が、「ブルーオーシャンを泳ぎ切る泳ぎ方」と言えます。
 このステップの進め方のポイントをまとめておきます。
顧客がほしがる付加価値を備えることで売価を高くしても、結果的には得になるような提案をしていく
原価も徹底的にコストハーフくらいの目標で徹底的に下げる
仕様の種類も先にパターン化して増やさないようにして、総合的なコストダウンを行う
薄利多売をねらうなら、2桁違う市場で競合のいない世界をつくり、先行者利益の占有を図る

ステップ5:市場公開と情報収集(売れるネタ拡大)
 「小魚マトリックス」を描くことで、現在手持ちにある小ネタがどのようなポジショニングにいるのか、似た商材との関係はどうであるか、メインの購入支持層、市場(もしくは競合)がどこにあるのか、などを俯瞰的に見ることができます。
 図7は、即席食品を小ネタした例です。

図7 即席食品を小ネタにしたときの小魚マトリックスの例

図7 即席食品を小ネタにしたときの小魚マトリックスの例

 横軸は商材や事業など売り物を示し、縦軸は競合もしくはバッティングする市場を表しています。円の大きさはマーケットの規模、円の中の扇の部分が自社のシェアを示しています。縦軸と横軸の括り方には、とくに注意が必要です。小魚マトリックスをつくった後でも、それで満足しないで、違う括り方で再度つくり直してみる必要があります。それほど、括り方は大事なことなのです。
 小魚マトリックスを描いて見えてくるのは、「どこにどのような商材を考えれば、売れるのか」に対する答えです。市場があるのに、自社に商材がないために見逃している商材が見つかるはずです。それは単品の商品だけでなく、商品やその周辺付帯物やサービスなど、総合的なソリューションビジネスになるかもしれません。これらを何回も描き、調べ直すことで、答えが見つかるのです。大事なことは自社ならではの強みを十二分に発揮できて、簡単には真似されないビジネスモデルにしておくことです。

ステップ6:爆売モデル実現(大魚構想)
 自社もしくはグループのコアな部分を活かしたビジネスモデルであれば、「筋の良い流れ」ができていると思います。しかし、そうなり切れていない場合、自社のビジネスが顧客の喜びに直結するような流れに修正しなければなりません。修正により顧客が自社ビジネスを支持してくれ、顧客が自社ビジネスを伸ばしてくれるからです。
 このようにしてコアな部分ができあがれば、それを拡大することはそう難しくないのです。ある顧客層に圧倒的に支持されるソリューションを持てば、その適用拡大と応用展開が見えてくるからです。適用拡大にあたっては、似たニーズを持つ他の市場をねらう、顧客層を少し変えてみるなど、発想を変えてソリューションを適用できそうなマーケットを想定します。また、あるシーンで解決済みの課題の周囲にもまだまだ課題はあるはずで、そのソリューションもまとめて提供するビジネスに変えていくべきです。

ステップ7:爆売実現(大魚実現)
 ステップ6で描いたシナリオの実行です。当然、ねらいどおりには進まないことも多々発生します。新たに発生する課題を1つずつ解決しながらシナリオを実行し、ねらった方向に進めていくステップとなります。

ステップ8:見直し体系化
 これまでステップによる活動はプロジェクティブに進行していたもので、組織的に新しいビジネスモデルを発足させる仕組みになっていない状態です。したがって、このステップではこれまで創出しにくかった新しい「ビジネスモデル:お金のもらい方」を組織横断的に継続的に起案できる仕組みを考えます。組織の体質によっては一律な仕組みはうまくいかないケースもあると思いますが、画一的な組織よりも社長直轄の選抜メンバーで編成したり、横断プロジェクトを立ち上げたりするのが望ましいと言えます。その中で常に新ビジネスの立ち上がり状況、全社売上への貢献率をモニタリングしながら、見直しと仕組みの体系化を図る必要があります。

ステップ9:実施運用(横水平展開:成果刈り取り)
 これまで実施してきたことの成果を刈り取るステップです。ステップ8までくれば、すでに十分な売上増の効果を得ていると思われるでしょう。しかし、その段階ではまだモデルで小ネタおよび小魚回りを広げただけの大魚に過ぎないのです。小ネタを育てる過程での類似品や現行商材への応用、小魚の他市場への展開、小魚の川下や川上ビジネスへの取り込みなど、これまでの顧客や協力事業者との関係から一時保留になっていたビジネスの拡大を図ります。将来を踏まえた展開となるよう、さらなる拡大を企画すべきです。やり方を真似る横展開、結果を真似る水平展開の両方が不足していることを理解できるはずです。

ステップ10:まとめ(標準化・組織規程化)
 横展開・水平展開をやり切って、成果のまとめと実施したことや学んだことを標準化して、組織のルールとして規程化していきます。詳細は割愛しますので、ぜひ参考図書をご覧ください。
 参考図書:「儲ける開発」2017年JMAC刊)

■ビジネス開発管理で革新レベル別にねらうものとは

 ビジネス開発管理では、企業の体力や体質が大いに左右します。実際に革新レベルを設定し、活動目標を定めようとすると、なかなか決めにくいものです。ここでは、あえて、粗利50%以上のビジネスを優に起業できることをレベル1としました。レベル2は、収益モデルの自在化、レベル3は収益が増殖する生物モデルのような変革と定めました。これらを参考に自社のビジネス開発管理の革新レベルを設定し、大きな成果の実現を目指してください。

図8 ビジネス開発管理の革新レベル別にねらうもの

図8 ビジネス開発管理の革新レベル別にねらうもの

ビジネスプロセスリーン開発管理

■ビジネスプロセスリーン開発管理とは

 先のビジネス開発管理を実施する際に、リーンで効率的なプロセスをつくり上げることがビジネスそのものを強靭にするだけでなく、商材そのもののコストを下げ競争力も高めることができます。
 ビジネスプロセスリーン開発管理とは、「商品だけでなく、サービスやビジネスの企画や設計および調達購買やつくり方・流し方を含めたビジネスプロセスをリーン化し、競合が真似できないレベルまで突出したリーンなプロセスを創造し、その実現を図る」ことです。
 リーン化する前と後をイメージしやすいように、図9に例を示しておきます。

図9 製造分野のリーン化の例

図9 製造分野のリーン化の例

■ビジネスプロセスリーン開発管理の考え方

 ビジネスプロセスリーン開発管理の実現はどのように考え方に基づくのでしょうか。考えるための屋台骨を組み立てる前に、「リーン」について考えてみましょう。
 「リーン」(Lean)とは、贅肉がなく引き締まっているという意味です。リーンは、もともとトヨタ生産方式が目指している「顧客価値(ゴール)に貢献しないものを徹底的に排除し、必要なモノを必要なときに、必要な量だけつくり、ムダ・ムラ・ムリのない状態を継続的に追求する」という考え方がベースになっています。ものづくりから出発した考え方でしたが、今や開発やサービス業のプロセスにも適用できるマネジメント手法として広く知られています。
 図10は「リーン」のイメージ図です。さらに、リーン化の考え方のエッセンスとして、

  1. アウトプット(顧客価値)から考え、このゴールに貢献しないものを徹底的に排除する
  2. 必要なものを必要な時、必要な量供給する
  3. ムダ・ムラ・ムリを多方面の観点から継続的に改善する

とまとめることができます。

図10 リーンとは

図10 リーンとは

 また、ムダ・ムラ・ムリの捉え方を図11にまとめたので、参考にしてください。

図11 ムダムラムリの本質

図11 ムダムラムリの本質

 表面的に見えているムダ・ムラ・ムリの背景には、発生してしまう構造的な原因(真因)があるはずです。それを見極められるように、見る観点を定めておく必要がります。たとえば、ムダは価値のある付加価値と価値を生まない非付加価値を区分するシャープな切り口が必要です。これがないとムダを切り取ることができないのです。また、価値とは「最終的に顧客に価値を与える行為のみ」と考える切り口を持てば、手直しや持ち替え、転記などがないダイレクトにアウトプットを生む作業以外は、非付加価値作業であると割切ることができます。
 ムラ、ムリについての解説は割愛しますが、図10を参考にその本質を考えてみてください。こうした考え方のベースを固めておけば、ビジネスプロセス全体をリーン化するにはどう考えればよいのかが理解できてくるはずです。

■ビジネスプロセスリーン開発管理の進め方

 ビジネスプロセスリーン開発管理の進め方を図12にまとめました。

図12 ビジネスプロセスリーン開発管理の進め方

図12 ビジネスプロセスリーン開発管理の進め方

 進め方は大きく2つに分けられます。1つは現行のビジネスプロセスを前提にリーン化見直しをするやり方です。もう1つは、新たにビジネスモデルも変えて革新したいときに、従来のやり方や発想にとらわれない新しいプロセスを開発するやり方です。以下でこれらのプロセスの概略を解説しておきます。

1)現行のビジネスプロセスを見直し、リーン化を徹底する流れ

 まず現行プロセスの棚卸しを行います。工程別に洗い出すとともに、プロセスコスト分析を行います。次に現行プロセスリーン化改善のステージでは、次の3つのアプローチからリーン化を検討します。

①ダイナミックな変革アプローチ
 強制発想法で工法変更も含めて、コスト半減以上のプロセス変革を検討します。ネック工程を洗い出し、その隘路を潰して能力を倍増し、余計なプロセスは排除します。リードタイムも半減以上の短縮を目指します。生産バラエティ分析を使って工法の変更も含めて検討し、現在の技術得られる最短のプロセスで最高の効率を目指してください。
 これら一連のアプローチのイメージを図13に示しておきます。ビジネス企画、顧客販売および流通ルート・生産・部品調達・加工・原料調達などすべてのビジネスプロセスでの最適化とリーン化を見直します。

図13 現行プロセスリーン化改善イメージ(ダイナミックな変革アプローチ)

図13 現行プロセスリーン化改善イメージ(ダイナミックな変革アプローチ)

②全プロセスの流れ革新
 必ずしも自前にこだわらず、委託してでも顧客価値に直結する流れを見直します。現在の顧客相手や販売先・販売手段チャネル・流通ルート・生産拠点・部品調達・サプライヤーの加工手段・原料調達手段など、全部を棚卸しして大幅な見直しを行い、ビジネスプロセスのコストハーフ以下を実現していきます。要は顧客が大喜びし満足する機能やサービスを提供することです。そのための構成要素は必須ですが、それ以外はすべてそぎ落とすことが必要です(図14)。

図14 現行プロセスリーン化改善イメージ(全プロセスの流れ革新)

図14 現行プロセスリーン化改善イメージ(全プロセスの流れ革新)

③顧客チャネル別ドラスティックな見直し
 ある顧客群にとっては大事なことも、別の顧客にとってはムダの塊かもしれません。また、その顧客には競合がいて、その差別化や優位性確保のために付加価値を提供しているかもしれません。したがって、顧客カテゴリー別に、そぎ落とし+付加価値プランを考えて、顧客別・競合別商材のビジネスプロセスを見直します(図15)。

図15 現行プロセスリーン化改善イメージ(顧客群別リーン化アプローチ)

図15 現行プロセスリーン化改善イメージ(顧客群別リーン化アプローチ)

 顧客ごとに、そこに供給している競合の採用している供給プロセスを分析するとともにそのプロセスの半減化以下のプロセスで顧客へ供給できる手段を考える。ただし、注意すべき点があります。全顧客ごとに個別のカスタマイズ対応を考えず、必ず仕様を共通化して量産効果を意識してください。

 ここまで述べてきたように、ビジネスプロセスリーン開発管理ではリーン化改善がキモとなります。現行プロセスのリーン化を試行・評価としては、改善した仕組みで新しいビジネスモデルを開発し、改善後の流れが適切に機能するかどうかを確認します。この評価結果に基づき、現行プロセスのリーン化をさらに改善してから本格運用に移行します。こうして現行ビジネス・新ビジネスプロセスについて、経営評価・検証・フォローを継続していくことになります。

2)新ビジネスプロセスを構築し、リーン化のレベルを革新する流れ

 従来に捉われない新ビジネスを開発していくわけですが、それが名実ともに機能するには、新ビジネスのビジネスプロセスも大きく革新される必要があります。ここでは「あるべき新発想ビジネスプロセス」と表現しておきます。まずは構想と着想から有力候補を選定して具体化し、あるべき新発想ビジネスプロセスを試行してみます。うまく機能しそうなら、あるべき新発想ビジネスプロセスの試販・評価収集の段階に進みます。実施してから発生する多少の不具合は都度改善・修正し、あるべき新発想ビジネスプロセスの本格量販に移行します。
 この流れに沿うことで、従来のプロセスを大胆にそぎ落とした、新しいビジネスモデルを実現できるのです。もちろん、現行ビジネス・新ビジネスプロセスの経営評価・検証・フォローは継続して実施してください。

3)永続的カテゴリートップを実現するビジネスプロセス確立の実現

 企業が繁栄し続けるためには、現行ビジネスプロセスも新ビジネスプロセスも含めて、飽くなきリーン化への挑戦が必須です。これを継続的に検討する仕組みをビジネスプロセスの中に埋め込むことにより、永続的に優位性を維持できるようにします。

図16 永続的カテゴリートップを実現するビジネスプロセスの実現

図16 永続的カテゴリートップを実現するビジネスプロセスの実現

■ビジネスプロセスリーン開発管理の革新レベル別にねらうもの
 図17にレベルごとのねらいをまとめました。
 レベル1:現行のプロセス、その源流や下流および周辺も含めたリーン化をねらうべきです。これも商流ごとに実施していけば、商材の系統的に粗利の向上に貢献できます。
 レベル2:工法変革も含め、理想的な付加価値に直結するデザインアプローチからのリーン化を目指します。
 レベル3:サプライチェーンのグループも含めて、企業経営や業務の存在そのものの価値を問い直すリーン化を検討すべきです。

図17 ビジネスプロセスリーン開発管理の革新レベル別にねらうもの

図17 ビジネスプロセスリーン開発管理の革新レベル別にねらうもの

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著者プロフィール

TPM革新センター シニア・コンサルタント
白濱 伸也(しらはま しんや)

1984年 JMAC入社。経営・生産・設備・間接領域におけるコンサルティング活動に従事。主要テーマは、経営戦略視点からのTPM展開支援、ビジネスプロセス革新、大幅コストダウン、リーンシックスシグマ展開支援、戦略的ISO9000&14000システム構築支援、生産システム設計、ヘルスケアコンサルティング、ビジネスモデル革新など。近年は、「17本のメニューに基づく新TPM(S-TPM)の推進者として提唱・普及に務めている。共著に『TPM成功の秘訣21』(JMAC)、『工場改善ハンドブック』(JMA)、『TPM展開ガイド』(JMAC)、『病院まるまる改善』(日本医療企画)、著作に『業務改革』(日本医療企画)、『儲ける開発』(JMAC)ほか多数、雑誌への寄稿も多数。