【第1回】故障ロスってどんなロス?
故障ロス改善にあたっては、まず「なぜ故障が発生するのか」について理解しましょう。故障は、設備の強度とそれに加わるストレスの関係で説明できます(下図)。
設備の強度とそれに加わるストレスの関係
設備には、常に何らかのストレスがかかっています。機能を果たすために加わるストレス(機械的・電気的ストレス)や、外的環境として加わるストレス(温度、湿度、振動、粉塵など)がそれです。このストレスが、設備の強度を上回ったときに、故障(機能停止型、機能低下型)が発生するのです。
これは私たち人間の体に置き換えて考えるとわかりやすくなります。
●設備の強度=健康状態、抵抗力、免疫
●劣化=疲労や不摂生
●ストレス=風邪のウィルス、インフルエンザの強さ など
疲労や不摂生が蓄積されると健康状態が低下し、襲ってくるウィルスに対抗できなくなってしまい、その結果体調を壊してしまう、これは設備故障の発生と同じと考えていいでしょう。
このように、故障が発生する理由は次のとおりです。
①劣化の放置
時間の経過とともに劣化が進行して、本来設備の持つ設計上の強度が徐々に弱まり、ストレスに耐えきれなくなって、ついに故障してしまいます。この要因には、①設備の使い方の悪さと、②設備を取り巻く環境の悪さがあります。清掃・給油・増締めといった設備の基本条件の不備によって強制劣化が進み、故障が発生するのです。また、自然劣化の状態であっても、寿命を越えて放置されると、やはり故障は発生してしまいます。
②ストレスの放置
設備の部位が劣化していなくても、設計時に想定していたストレス以上に力がかかれば、故障は発生します。操作・修理ミスや基本・使用条件を守らないと、ストレスは大きくなってしまいます。
③強度不足
設計者の技量不足や不注意などによって、もともと設備に弱点があると、通常のストレスでも故障してしまいます。
次回は故障ロスの金額評価を解説します。
この記事は『「故障ロス改善」はこうやれ!』(JMAC刊)をWEB用に再編集したものです。
■著者について
大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)
日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント