【第3回】極意!「なぜなぜ分析の10則」〜知ってりゃ天国、知らなきゃ地獄〜
前回、「なぜなぜ分析」とは、故障やロスを発生させている要因を思いつきではなく、規則的に、順序よく、漏れなく出し切るための分析方法であると説明しました。故障やロスは「なぜ」起こったのか要因を考え、さらにその「要因」が「なぜ」起こったのか掘り下げて考えていくことで要因を突き止め、対策を立てる——といった流れで分析は進められます。しかし、やり方を間違えると有効な対策は導き出されません。そこで、今回は「なぜなぜ分析」を進めるうえでのルール「なぜなぜ分析の10則」を解説します。
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⚫︎なぜなぜ分析の10則
「なぜなぜ分析」は、ただ漠然と「なぜ」を繰り返しても、故障やロスの要因を突き止めることも、対策を立てることもできません。次にあげる10の法則を守って実施してください。
【第1則】「現象」や「なぜ」に書く文の主語は1つにすること
「熱が逃げていくから、温度が規定まで上がらない」といったような1文に主語が2つある複文は不適切です。「温度が規定値まで上がらない」(現象)、「熱が逃げていく」(なぜ1)といった簡潔な表現にして文を2つに分けましょう。そうすることで「現象」に対する原因が、「なぜ1」以外からも探しやすくなります。
【第2則】最初の「なぜ」は、現象を発生させている部分そのものに焦点を絞り、発生の原理・原則(または発生させないための原理・原則)をもとに表現すること
発生ポイントのスケッチを描き、構成要素をはっきりさせると、発生の原理・原則もしくは発生させないための原理・原則がわかりやすくなります。
【第3則】「なぜ」を考えた後は逆方向に読み返し、「論旨が理屈に合っているか」「論旨が飛躍していないか」をチェックすること
逆方向に読むには「○○だから〜」といった言葉を使うと便利です。たとえば、「魚がこげた」(現象)、「炎が魚に熱を加えすぎた」(なぜ1)を逆方向に読み返してみます。この場合、「○○だから〜」で2文をつなげてみると、「炎が魚に熱を加えすぎたのだから、魚がこげた」となり、論旨が理屈に合っていることがわかります。
【第4則】書いた「なぜ」が発生しなければ、その前の「なぜ」が本当に発生しないか必ず検討し、並列関係にある「なぜ」がほかにあれば漏れなくあげること
第2則でも述べたように、イラストを描いて構成要素をはっきりさせると、「なぜ」をより多くあげやすくなります。
【第5則】不自然な「なぜ」(原因追求にならない「なぜ」)には注意すること
常に再発防止策を導き出すことを念頭に置いて、「なぜ」を追究しましょう。
【第6則】誰でもわかる具体的な言葉を使うこと
「○○が悪い」といった表現、「位置がズレた」のようなズレの方向がはっきりしない表現、主語が書かれていない表現は不適切です。
【第7則】基準としているモノや事柄にも「なぜ」の矛先を向けやすくするために、形容詞を用いる場合は「〜に対して〜」という表現を使うこと
たとえば「サーバーから定量出てくるコーヒーが紙コップからあふれた」という現象に対する「なぜ」は、「紙コップが小さい」ではなく「コーヒーの量に対して紙コップの容量が小さい」と表現しましょう。
【第8則】「忙しい」や「ボーッとしていた」など人間の心理面への原因追究は避けること
人間の心理面の原因追究は、再発防止には結びつきません。
【第9則】再発防止策につながる要因が出てくるところまで、「なぜ」を進めること
不完全な原因追求から生じた暫定的な処置では、再発防止策にはなりません。維持管理を念頭に置いた再発防止策につながる要因が出るまで、「なぜ」を続けましょう。
【第10則】現場・現物をしっかり検証すること
導き出した「なぜ」が事実かどうかを、必ず現場・現物で検証しましょう。検証方法としては「現物を観察する」「聞取り調査をする」「分解する」「計測する」などがあります。
本記事は『月刊TPMエイジ』2007年6月号からの転載です