【第4回】改善の進め方ステップ
改善の進め方(またはQCストーリー)を参考にすることが故障ロス改善の入り口です(図表2・7)。現場サークルが故障ロス改善に取り組む進め方として使い慣れている手順を活用するのがよいです。この進め方は、聴く側(管理者、スタッフなど)が順序を理解しているので指導しやすいというメリットがあります。
大切なのは、取り組むテーマを明確にして原因を追求し、ちゃんと歯止めする、その繰り返しです。わかりやすく理解しやすい進め方を採用してください。
改善ステップ
ステップ | 内容 | |
1 | テーマ選定 | ロスの大きな故障テーマを選定する 故障で困ることをテーマとして選定する |
2 | 現状把握と目標設定 | 対象となる故障について細かく現状把握する 改善目標を設定する |
3 | 活動計画の立案 | 何を、いつまでに行うかを決める |
4 | 要因の解析 | 特性要因図やなぜなぜ分析で原因追究 |
5 | 対策の検討・実施 | 改善案の立案 基本条件の整備 |
6 | 効果の確認 | 金額効果の算出 維持管理項目の明確化 |
7 | 歯止め | 基本書の見直しとチェックリストの作成 スキル確認 |
ステップ1:テーマ選定
パレート図やグラフを使用して、故障停止時間別や故障件数のグラフを作成します。そこから、
①取り組みやすいテーマ
②ロスが大きいテーマ
③その他テーマ
に分けてテーマ選定をします。改善活動向けには、①、②のテーマから抽出して進めるとよいでしょう。
ステップ2:現状把握と目標設定
【現状把握】
現状把握には、大きく2つの方法があります。
①悪さ加減の確認のための把握:ロス時間や頻度、次の工程への影響、処置による作業者の苦労など
➡テーマ選定理由に使用されます。
②分析のための把握:現物確認を含め、詳細に対象設備や故障部位を調べる
➡要因分析に使用されます。
【目標設定】
故障の難易度から目標設定します。活動期間を仮に半年と設定して検討します。目標の設定方法としては、以下の方法を参考にしてください。
- ゼロ目標:実現が見えてきた場合に使用する
- 半減目標:着地点がはっきりしない場合など。30%減なども同様
- 達成できそうな範囲での目標:根拠のある設定方法として使用頻度が高い
- なし:改善の取組みを学ぶことを主目的に行う場合
ステップ3:活動計画の作成
活動内容の確認とサークル内での役割分担、進捗確認を目的に活動計画を作成します(図表2・9)。その際には、対策実施時期や生産面の都合を考慮しつつ、ムリのないスケジュールを立案するようにしましょう。また、サークルメンバーの参画意識を高めるねらいも確保しながら役割分担を工夫します。
活動計画表の例
実施項目 | 内容 |
テーマ選定 | |
現状把握と目標設定 | |
要因の解析 | |
対策の検討・実施 | |
効果の確認 | |
歯止め |
実際には、テーマの難易度や稼動状況により活動が変動する場合も多いものです。活動計画のイメージがつかない場合は、他サークルや従来活動での活動計画を参考に作成しましょう。
ステップ4:要因分析
要因分析は、特性要因図やなぜなぜ分析を活用しながら進めます(図表2・10)。その際に、故障部品や故障部位の機能や構造を再確認するようにしてください。あげられた要因については、事実の確認をしっかり行いましょう。
なぜなぜ分析の例
故障の要因分析の結果として以下の項目が出てくるケースが多々あります。これはいずれも、私たち人の行動面に対する反省を促す内容です。
- ふだんからやるべき点検が抜けている
- やるべき点検がなされていない
ステップ5:対策の検討と実施
要因分析を行い、原因を特定できた(または特定できなくても、いくつかの原因に絞り込めた)場合、多くの対策アイデアを出し、実現性の検討をします。その際には、技術スタッフや管理職から意見を聞くなど、さまざまな角度から検討するようにしましょう。
以下のフォーマットは、対策検討用の評価項目になります。ちょっと数が多いので項目を絞ってもOKです。よりよい改善案になるように、お金ではなく知恵を出すヒントに活用ください。
評価項目 | 最終評価 | |||||||
信頼性 | 保全性 | 操作性 | 安全性 | 実現性 | コスト | |||
① | ||||||||
② | ||||||||
③ | ||||||||
④ | ||||||||
⑤ |
ステップ6:効果の確認
対策後一定期間経過を観察し、対策の有効性を評価しましょう。実施した対策で効果が十分出ているかどうかを確認します。良くなることはよいのですが、それが一時的である場合もあるので、冷静に確認しましょう。
また、効果は一般的に、有形と無形に分けて整理します。
効果の表示例
ステップ7:歯止め
効果の確認ができれば、歯止めとして対策を標準化します。標準化は、以下の観点でまとめましょう。
- 日常作業での実施事項
- 定期点検での実施作業
- 教育資料
- 設計や技術へのフィードバック
次回はこの故障ロス改善のステップについて解説します。
この記事は『「故障ロス改善」はこうやれ!』(JMAC刊)をWEB用に再編集したものです。
■著者について
大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)
日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント