【第5回】故障ロス改善ステップ

 このアプローチは、故障ロス全体をとらえながら組織的に進める、ちょっと高度な進め方です(下図)。技術スタッフや保全の担当者、管理職、現場サークルが一緒になって進めます。

故障ロスの改善プログラム
ステップ 内容
1 過去の故障の分類・整理 ・設備やライン別、発生部別に分類
・故障モードとその原因別に分類
・突発、再発区分に分類
2 故障解析と一斉点検 ・再発故障の解析のやり直し
・新規故障の徹底解析
3 強制劣化の排除と放置された 劣化の復元 ・基本条件不備による不具合の発見と復元
・使用条件を確認しその遵守
4 弱点研究・改善(改良保全) ・発生源対策や困難個所対策の実施
・目で見る管理の実施
・寿命延長対策の検討
5 各種基準書の作成・整理 (不良がらみの故障も含む) ・定期保全基準の作成
・自主保全基準の作成
・点検項目と製品品質との関係明確化
6 保全の効率化 ・目で見る管理の充実
・予備あ品管理の充実
7 予知保全の展開 ・簡易診断機器によるモニタリング実施
・精密診断による劣化予測と寿命予測の実施


Step1:過去の故障の分類・整理

 故障時間や件数をもとに、故障の多い設備やライン、故障部位を明確にします。いわゆる現状把握です。

 その関連がわからない場合も多々ありますが、そのようなときにはマトリックスにして、故障部位と故障モードを確認することを勧めます。その際には、エクセルのピポッドテーブルを使用するとよいでしょう。

 指標としては、MTBF、MTTR、故障度数率などがあります(下図)

グラフの例
グラフの例

Step2:故障解析と一斉点検

 1件1葉で故障の解析を行います。故障の処置は行われていても、その後の追求がなされていないことは多いものです。そこを追求するかしないかの違いが、その会社の管理レベルや風土を表しています。詳しいやり方は後述しますが、なぜなぜ分析やPM分析を活用しながら真因を追究します。

 結局はどこかで、真因を追求しなければなりません。ある工場では1週間に1件、1ヵ月に1人1件の故障解析をやると目標設定したところがあります。ここではその後、故障が半減しました。このようにすると、故障の解析も一挙にスピードが上がります。

コラム:原因追究のポイント

 故障の原因追究は、故障モードに着目してそのメカニズムを明確にすることがポイントになります。
 故障モードとは、たとえばある設備の搬送装置がセンサー異常で停止したとします。この故障は、センサーを固定しているアングルにパレット上に通常よりもズレて詰まれたケースが接触し、アングルを変形させてセンサー異常を起こしていました。
 この場合の「故障モード」は、センサーを固定しているアングルの変形がそれに当たります。搬送装置の停止やセンサー異常は、機能が停止した「故障」を意味しており、結果となります。故障モードとして取り上げるのではありません。
 このように、変形や摩耗、亀裂、断線など物理的・化学的な変化が発生したものに着目してみると、原因追究がスムーズにいきます。

Step3:強制劣化の排除と放置された劣化の復元

 強制劣化の排除策では、次のようなポイントがあります。
①設備に付着しているゴミ・汚れ、または加工中に発生する切粉などを取り除く
②駆動部の回転部やスライド部の汚れの除去、ガタやゆるみの確認をする
③潤滑部や必要と思われる部位に給油をする
④エア漏れやセンサーの汚れ・ガタを確認、その他アクチュエーターのゆるみやガタを確認する
⑤とくに加工経路上のガイドや位置決めピンやプッシャーなどのゆるみ・ガタ・摩耗がないか確認する

 以上の個所に不具合点があれば、復元計画を作成して復元します。また、再度使用条件(時間、圧力、温度、回転数、位置、クリアランスなど)を確認します。

Step4:弱点研究・改善(改良保全)

 設備の基本条件を維持しやすいように対策します。一般的な見える化改善を実施する段階です。それに合わせて、寿命延長や設計上の弱点対策も行うようにしましょう。

Step5:各種基準書の作成・整理(不良がらみの故障も含む)

 対策結果を確認し、維持管理項目を再度抽出します。既存の点検項目と突き合わせして見直し、再設定するようにしましょう。その際、製品品質との関係を明確にしておくことが大切です。点検の必要性を補足するような資料も準備しておきましょう。

Step6:保全の効率化

 故障ロスの改善には、
①故障ロスそのものの発生を改善する➡アウトプットのロスの改善
②インプットのロスを改善する➡メンテナンスコストの改善
という2つの側面があります。この段階では、故障ロスの発生は抑えられ、メンテナンスコストのミニマム化をねらった取組みになります。

 保全性向上の観点からは、
①作業内容の見直し
②予備品の管理区を見直して、常備品から非常備品化
③部品類の管理見直し・電子化
などがあげられます。

Step7:予知保全の展開

 劣化を測定するための特性値を把握します。もし代用特性で劣化を確認できるのであればそれを活用します。
 一般には、振動や電力、電流、熱などを活用します。また、連続モニタリング以外に、作動油や潤滑油の診断なども活用しましょう。すべての故障テーマを予知保全化するとはいかなくとも、積極的にトライしてみましょう。

今回の記事で示すべき一部の図表類は、実在の企業の資料のため、WEBでは割愛します。詳細は下記の書籍をご参照ください。


この記事は『「故障ロス改善」はこうやれ!』(JMAC刊)をWEB用に再編集したものです。


■著者について

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

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