【第6回】自主保全ステップと基本条件整備
今回は自主保全のステップと基本条件整備について触れておきます。それぞれの詳細は、他のコンテンツを参照してください。ここでは自主保全3ステップまでのポイントと基本条件整備の概要について並列して載せておきます。
自主保全ステップ
未然防止のアプローチである自主保全ステップは、TPMの特徴である現場オペレーター向けのプログラムです(下表)。
ステップ | 内容 | |
1 | 初期清掃(清掃点検) | 設備本体を中心とする ゴミ ・ ヨゴレの一斉排除と給油、増締めの実施および設備の不具合発見と復元 |
2 | 発生源困難個所対策 | ゴミ・ ヨゴレの発生源、飛散の防止や清掃・給油・増締め・点検の困難個所の改善による清掃・点検時間の短縮 |
3 | 自主保全仮基準の作成 | 短時間で清掃・給油・増締め・点検を確実に維持できる行動基準の作成(日常、定期に使用できる時間枠を示してやることが必要) |
4 | 総点検 | 点検マニュアルによる点検技能教育と総点検実施による設備微欠陥摘出と復元 |
5 | 自主点検 | 能率よく確実に維持できる清掃給油点検基準、自主点検チェックシートの作成 ・ 実施 |
6 | 標準化 | 各種の現場管理項目の標準化を行い維持管理の完全システム化の推進(現場の物流基準、データ記録の標準化、型治工具管理基準、工程品質保証基準 など) |
7 | 自主管理の徹底 | 会社方針・目標の展開と改善定常化によるムダ排除・コストダウンの推進、保全記録の確実実施と解析による設備改善の推進 |
第1〜3ステップを中心として、第4ステップは必要性の高い内容に絞って実施する方法を勧めます。
Step1:初期清掃
設備を清掃することにより、汚れによるストレスを排除するとともに、不具合(漏れ・ゆるみ・損傷など)を発見し、発見した不具合は復元します。この不具合の発見をエフ付け活動、その復元をエフ取り活動といいます。これらを通じて設備の機構を理解するとともに、不具合を不具合として見る目を養います。「清掃は点検なり、点検は不具合の発見なり、不具合は復元改善するものなり、復元は成果なり、成果は喜びなり、喜びは次への糧なり」を体験します。
Step2:発生源・困難個所対策
ゴミ・汚れの発生源を断ち、飛散防止や清掃給油の困難個所を改善し、与えられた目標時間で清掃給油ができるようにします。また、改善を通して「改善の目を育てる」、つまり観察・解析・対策を行うことによって改善の4原則であるECRSを学ぶことになります。
何度も改善を重ねることによって、設備に対する愛着が生まれてくるのです。
Step3:自主保全仮基準の作成
第1・2ステップを継続して維持するために、清掃仮基準の作成と、給油と潤滑状態を見直し、不具合個所や給油・点検困難個所を摘出・改善して給油仮基準を作成します。このことによって、設備の信頼性と保全性の向上を図り、守りやすい基準書をオペレーター自らが作成します。この段階で、強制劣化のない姿にし、維持を行います
コラム:ステップや手法・ツールの活用上の注意
この連載では、いくつかのステップや手法・ツールを紹介していますが、故障に関するテーマはこの手法を使う(使え)的なことを推奨するものではありません(常にステップや手法・ツールを使用して改善する必要はありません)。
最近、簡単な故障ロス改善に対しても、手法などを使用して改善した内容を意図的に強調する(改善結果をステップにムリに当てはめる)例をよく見ます。改善のためには、正しい手順ややり方を理解することはもちろん大切です。しかし、簡単にできることまでステップや手法をあてはめることは、結果的にロス改善ができても、職場体質としてよい結果を生みません。徹底して取り組む必要性が高いテーマにステップや手法・ツールを適用するようにしましょう。
基本条件整備ステップ
ステップ | 活動内容 | ねらい | |
1 | 整理 | 職場エリアの不要品、不急品の除去を行う | 作業領域の拡大と動きやすい環境を整備する |
2 | 整頓 | 職場エリアで必要なモノがいつでも必要なときに使いやすい状態にする | 探すムダの徹底排除と効率化を図る |
3 | 清掃 | 職場エリアのゴミ、汚れ、異物などをなくし、きれいな状態にする | 故障の原因である潜在欠陥の顕在化と復元を行い、「清掃は点検なり」の実践と故障の低減を行う |
4 | 清潔 | ステップ1〜3の内容が職場ルールとして維持できることを、設備の汚れの元を源から断ち、維持しやすいよう改善する | 設備の漏れ・汚れなどの発生源を断ち、時間内に整理・整頓・清掃が確実に維持できるようにし、設備の保全の向上を図る |
5 | 給油 | 自職場設備の給油が必要な個所を調査し、適種・適量の正しい給油状態を確認し、目で見る管理を行う | 設備の給油個所に、必要な油・必要な給油量や給油状態の確認を行い、給油不良による故障・チョコ停を排除する |
6 | 増締め | 正しい締付け・緩み止めを学び、自職場設備の増締めが必要なボルト・ナットの点検を行い、管理しやすい目で見る管理を行う | 増締め必要個所となるボルト・ナットの確認、正しい工具の使い方、チェックマーク・合いマークの正しい付け方や緩みボルトなどの確認を行い、緩みによる故障・チョコ停の原因を排除する |
7 | 習慣化 | 自職場の5S・メンテナンス・管理すべき項目を明らかにし、守れる基準の作成と維持管理できる仕組みをつくる | 清掃・点検・給油・増締めが定期的にできるように保全カレンダーを作成し、実施する |
この記事は『「故障ロス改善」はこうやれ!』(JMAC刊)をWEB用に再編集したものです。
■著者について
大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)
日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント