【第5回】「慢性ロス」ってどんなロス?

個別改善の目的の1つに、慢性化した故障やチョコ停などの慢性ロスの原因を徹底的に追求し、改善を図るということがあります。しかし、この慢性ロスはなかなか減少しないのが実態です。その慢性ロスをゼロにするための考え方と手法が、「PM分析」です。そして、慢性ロスの特徴を把握することがPM分析の第一歩となります。では、PM分析の対象となる慢性ロスとはいったいどんなもので、なぜ減少させることが難しいのでしょうか。そこで、今回は慢性ロスの特徴や考え方について解説します。

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まんがで個別改善

●突発ロスと慢性ロス

 故障や不良の発生形態——つまりロスには、突発型(突発ロス)と慢性型(慢性ロス)があります。

 突発ロスは、設備が正常に稼動する上での条件・要因が急に変わったために発生します。たとえば、「突然の振動によって軸がズレたので、ワークにバラツキが生じた」といったケースです。

 この突発ロスは、1つの原因が影響していることが多いため、比較的原因がつかみやすいものです。また、原因と結果の関係がはっきりしているので、復元的な対策(変わってしまった条件や要因を元の正しい状態に戻す対策)を打てば解決することが多いといえます。

 一方、現場で日常的に発生する慢性ロスは、その原因と結果の関係が複雑に絡み合っているのが実態です。そのため、原因を明確に特定できない場合が多く、対策を打つことが難しいのだといえるでしょう(下図)。

慢性ロス

●慢性ロスの考え方

 慢性ロスの特徴を整理すると、以下の2点があげられます(下図)。

慢性ロスの特徴

  • 原因は1つであるが、原因となるものが数多くあり、それがそのつど変わる(複数原因)
  • 複合原因により発生し、その要因の組合わせがそのつど変わる(複合原因)

 これらの特徴を十分に把握することが、慢性ロスを改善する第一歩といえます。

 しかし多くの現場では、「現象を十分に理解しないまま原因を決めつける、絞りすぎる」ため、慢性ロスが減少しないという状況に見舞われています。対策そのものは的を射たもので1つの原因に対しては効果的であっても、他の原因について対策をしていないため、効果は一時的なものとなり、すぐにロスが再発してしまうのです。

 慢性ロスは、考えられるすべての原因をリストアップして、それらについて調査し、欠陥があれば1つずつ対策を打たなければ、ゼロにすることはできません。

 それを実現するためには、従来とは違った革新的な考え方と手法が必要となります。それがPM分析なのです。


本記事は『月刊TPMエイジ』2007年8月号からの転載です

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