【第6回】「マッチ売りの少女」の物理的解析
個別改善の目的の1つに、慢性化した故障やチョコ停などの慢性ロスの原因を徹底的に追求し、改善を図るということがあります。しかし、この慢性ロスはなかなか減少しないのが実態です。その慢性ロスをゼロにするための考え方と手法が、「PM分析」です。そして、慢性ロスの特徴を把握することがPM分析の第一歩となります。では、PM分析の対象となる慢性ロスとはいったいどんなもので、なぜ減少させることが難しいのでしょうか。そこで、今回は慢性ロスの特徴や考え方について解説します。
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●従来の改善
数多くの現場で行われている改善の手法に、QCストーリーによる改善があります。すなわち、テーマ選定の理由→目標設定→現状調査把握→要因解析→対策→結果の確認→歯止め→今後の取組み、といった手順で進める手法です。この手法は故障率や不良率が高い場合には大きな効果があります。
しかし、この手法には、
- 設備の機構を十分にわかっていない
- 現象を理屈で考えていない
- 加工原理を理解していない
- 要因のとらえ方が粗すぎる
- 重点思考をして、影響度の高いものだけを取り上げている
といった欠点があります。そのため、慢性ロスは取り残されることが多く、ロスをゼロにすることは非常に困難です。
●PM分析の由来と定義
従来の改善では困難だった「慢性ロス」をゼロにする手法がPM分析です。PM分析のPMとは予防保全(preventive maintenance)や、生産保全(puroductive maintenance)のPMではなく、下図のような意味を持っています。
PM分析の由来
この図からも読み取れるようにPM分析とは、
- 慢性化した不具合現象(慢性ロス)を原理原則に従って物理的に解析し、不具合現象のメカニズムを明らかにする
- 不具合現象の要因と考えられるものを「設備の機構」「人」「材料」「方法」の面からすべてリストアップする
という考え方のことを言います。
●物理的な解析
PM分析は物理的な解析を行うことが特徴です。物理的な解析とは、“現象を理屈で考えるとどうなるか”を追求することであり、ものの原理・原則を物理的に説明付けることです。たとえば「ヒューズがとぶ」という現象を物理的に解析すると、「瞬間的に定格以上の電流が一定時間以上流れることによる熱溶断」となります。
物理的な解析を行うことで、現象と要因の間に論理的な関連性を持たせることができます。一方で、正しくできないと、関係のない要因が出てきたり、要因のもれが出ることになります。
また物理的解析を要領よく行うには、
- 加工原理を再確認する
- 加工原理上の原則は何かを考える
- 現象に関連する条件は何かを考える
- 物理量の変化は何かを考える
といった手順を押さえておくとよいでしょう。
本記事は『月刊TPMエイジ』2007年8月号からの転載です