潤滑・給油編:【第7回】潤滑油の劣化現象

 潤滑油は、機械の内部を血管のように巡ることによって、

  1. 摺動面の摩擦や摩耗を低減する
  2. 発熱部を冷却する
  3. 摺動部などに発生した摩耗粉などの汚染物質(コンタミナイト)を排出する

といった働きをします。

 しかし、潤滑油が劣化すると上記①②③の働きが著しく低下してしまい、焼付き、騒音振動、温度上昇などが発生して、重大なトラブルを引き起こします。

 潤滑油の劣化には、大きく3つの側面があります

  • 基油の劣化:主成分の炭化水素が、大気中の酸素と化合して酸化劣化する
  • 外的要因による汚染:摩耗粒子、水、各種ガス、砂などによって劣化する
  • 添加剤の変質・消耗:添加剤の消耗、油中の水分と加水分解により変質劣化する

 このような潤滑油の劣化によるトラブルを防止するには、日常の潤滑管理が重要となります。

潤滑油の劣化

<ひとくちメモ> 潤滑油の白濁(白色の濁り)が発生する原因と対策の違い

潤滑油が白濁する原因は1つではないので注意が必要です。

<原因>油中に水分が浸入した場合→<対策>更油
<原因>油中に気泡が発生した場合→<対策>気泡の原因調査

なお、水分の浸入による白濁は、しばらくしても変化しませんが、油中に気泡が発生して起きる白濁は、しばらくたつと透明になっていきます。また、潤滑油の水分限界は、一般に0.1%以下となっています。 



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 潤滑油の劣化には、基油の劣化、外的要因による汚染、添加剤の変質・消耗の側面がある。
Q2 作動油の水分管理限界は、一般に0.5%以下となっている。

A1 ◯:題記のとおりです。
A2 ×:作動油の水分限界は、一般に0.1%以下となっています。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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