バルブ・配管編:【第65回】配管用鋼管の使用範囲

 配管では、温度と圧力の使用範囲が重要になってきます。

 一般に、0〜350℃の常温域では、SGP、STPG、STS、STPTの炭素鋼管を用います。0℃以下の低温域では法規の定める範囲内で、高温域ではSTPTを用いて、それ以上の温度域ではSTPAなどのC-MoやCr-Moを用いて、高温クリープ(注1)を防止します。さらに600℃以上の高温では、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304、SUS316を用います。

 SGPについては、10㎏/㎠以下といった使用制限が設けられています。低温側は低温脆性(注2)を起こさないことが必要です。微細粒子のアルミキルド鋼STPL380や、変形に対して柔軟な3.5Ni(STPL450)、9Ni(STPL690)あるいはオーステナイト系ステンレス鋼SUS304などが用いられます。

注1:高温クリープ=高温時、炭素鋼などで外力が増さないにもかかわらず、時間とともに変形が進行する現象。結晶粒界が高温のためにゆるんで、結晶粒がスリップするのが原因。
注2:低温脆性=炭素鋼などが温度低下とともに硬くなり、逆に伸びが減少して脆くなる現象。

 下図に、JIS規格による配管用鋼管の使用範囲を示します。

JIS規格による配管用鋼管の使

JIS規格による配管用鋼管の使用範囲

『機械保全技能ハンドブック・機械要素編』(JIPM刊)p.354の図をもとに制作




<ひとくちメモ>  溶接鋼管における炭素含有量の制限

JIS B 8265「圧力容器の構造—一般事項」で、炭素鋼・合金鋼の溶接には炭素量を0.35%以下と制限しています(米国機械学会:ASMEsec.Ⅲ、Ⅷにおいても制限あり)。
溶接の場合、母材の炭素量が0.35%程度以上だと、溶接境界部(ボンド)と熱影響部は自然冷却ですが、外気との温度差が非常に大きいために冷却速度が大きくなり、急冷したのと同じ状態となって硬くて脆くなるため、炭素量に制限をかけています。





◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 合金鋼鋼管(STPA)は、Cr-Mo(モリブデン)を加えて高温クリープの対応を行う
Q2 溶接鋼管では、溶接による硬くて脆くなることを防ぐため、炭素量を0.35%以上としている

A1 〇:題意のとおりです。
A2 ×:炭素量を0.35%以下と制限しています。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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