K(暗い)Y(夜道は)T(とても危険) 連載第9回
TPMは「不良ゼロ」「故障ゼロ」そして「災害ゼロ」の3つのゼロを実現する活動です。また、TPM展開の8本柱には、「安全・衛生・環境」という活動が入っています。つまり、災害ゼロ、安全に関する取組みは、TPMの大きなテーマなのです。工場で働く誰もが安全な生産現場を望んでいます。しかし、生産現場には危険が少なくないのが現状です。そこで、現場のどんなところに危険が潜んでいるかを把握することや、安全に対する正しい知識、ルールの遵守などが重要となっていきます。今回は危険から身を守るための活動とそのポイントを見ていきましょう。
ここがポイント!
KYTで危険の芽を摘む
KYTとは、危険(K)予知(Y)トレーニング(T)を意味し、危険が潜んでいる個所を事前に把握し、改善する意識を養うトレーニングのことをいいます。人間は「見落とし」「ど忘れ」「判断ミス」などを犯しがちです。それはそのまま危険につながってしまいます。
そうした不安全行動の要因をなくすために、KYTを通して危険に対する問題意識を高めます。
KYTは、およそ次のような流れで進められます。
① 現状把握:どこにどんな危険が潜んでいるかを把握する
② 本質追求:「この個所がこういう状態なので、こういった危険が起きる」といったように危険の本質・ポイントを整理し、確認する
③ 対策立案:危険のポイントに関する具体的で実行可能な対策を立てる
④ 目標設定:サークルの行動目標を設定する
⑤ 確認:演習
⑥ 発表・コメント
ヒヤリ・ハットは安全の先取り情報
仕事や日常生活の中で、事故・災害が起きる一歩手前の、一瞬ヒヤリとしたり、ハッとしたりする状況を「ヒヤリ・ハット」と呼びます。このヒヤリ・ハットは貴重な安全の先取り情報です。大きな事故・災害と同様に、原因をしっかりつかみ、再発させないことが大事です。事故につながっていないからとヒヤリ・ハットを軽視してはいけません。
ヒヤリ・ハットの報告・提案のポイントは、以下のとおりです。
・時間が経つと忘れるので、その日のうちに報告・提案をする
・内容は5W1H(When:いつ Where:どこで Who:だれが What:なにを Why:なぜ How:どのように)に基づいて具体的に報告・提案する
・口頭だけでは忘れるので、報告・提案用紙に記録しておく
・事例は定期的にミーティングで発表する
指差呼称でしっかり確認
急いで作業を行わなければならないときに、何も考えず反射的な行動をとってヒヤリとしたりケガをしたりするケースがあります。それを防ぐには作業に取りかかる前に、ほんの短い時間でも急所を確かめ、考える行動が必要となります。それが指差呼称です。
指差呼称とは、作業の要所ごとに確認すべき対象をしっかり見て、正しい姿勢で腕を伸ばして指を差し「右ヨシ!左ヨシ!前方ヨシ!」と大きな声で唱える一連の動作のことです。やり方は以下のとおりです。
① 目は確認すべきことをしっかり見る
② 左手は腰に、右腕は伸ばして人差し指で対象をさす
③ 口は大きな声で「○○ヨシ!」「バルブ開ヨシ!」と唱える
④ 自分の声を自分の耳で聞き確認する
指差呼称は、感覚器官の2つの器官(視覚・聴覚)を活用するので、大脳が刺激されて高いレベルの注意力を維持することができます。