潤滑・給油編:【第1回】潤滑状態の違い
摩擦面の状態を機構で分類すると、「すべり摩擦」と「ころがり摩擦」の2種類になりますが、潤滑剤を使用している状態からは「乾燥摩擦」「境界摩擦」「流体摩擦」の3種類(摩擦の三態)に分けられます。この3種類は、摩擦面における潤滑剤の挙動に違いがあります。
「乾燥摩擦」は2つの摩擦面の間に潤滑剤がなく、完全に乾燥した状態です。この状態が続くと焼付きや摩耗に至ります。「境界摩擦」は摩擦面の表面が、極めて薄い潤滑剤の膜で分離されている状態です。この状態が長く続くと焼付きに至ります。「流体摩擦」は摩擦面が直接に接触することなく、比較的厚い連続的な油膜とその圧力で完全に隔てられている状態です。潤滑が良好な状態といえます。
<ひとくちメモ> 「固体摩擦(乾燥摩擦)」と「固体潤滑」は違うものです! 固体潤滑とは、潤滑性を持つ「個体」を摩擦面に付与する方法です。黒煙や二硫化モリブデンといった流体の潤滑剤を使用しなくても、スムーズに潤滑できる潤滑性を持っている「固体潤滑剤」を利用しています。名称がよく似ているので間違えないようにしましょう。 |
◆Q&Aで理解度チェック!
Q1 境界摩擦状態であれば、2面間が直接接触してないので安定した潤滑状態を保つことができる。
Q2 流体摩擦では、摩擦面間に油膜のクサビができやすい形状となる。
A1 ×:給油不足、粘度不足、繰返し運転停止などで焼付きなどを起こしてしまいます。
A2 〇:題意のとおりです。
【筆者プロフィール】
■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境
輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。
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