潤滑・給油編:【第8回】潤滑油の劣化診断

 潤滑油の劣化は、日常点検や定期点検などの目視で確認できます。潤滑油の白濁や、著しい変色が見られる場合などは、「更油(油を抜いて交換)」を実施するのが一般的ですが、劣化度の判断が難しい場合は劣化診断の実施をお勧めします。

 一般的な劣化現象の目安を、要因ごとに見ると以下のようになります。

  • 動粘度:潤滑油の動粘度(流体の動きの伝わりやすさ)が10%以上変化した場合は、異種の油混入や劣化が考えられます。
  • 汚染度:メーカーが指示する汚染度に準じるほか、ISOやJISで規格化されている重量法(油中の微粒子を計る)などで汚染度を判定します。
  • 水分:水分は錆を発生させたり、設備の寿命低下にも影響を及ぼします。一般に、稼動中の設備における水分は0.1%以下とします。
  • 全酸価:全酸価(油中の酸性成分の全量)が一定レベルを超えると、急激に劣化が進みます。全酸価は潤滑油の種類によって異なるので、メーカーの指示に沿って判定します。

潤滑油の劣化診断

<ひとくちメモ> 「粘度」と「動粘度」は意味が違います!

粘度は“流体の動きにくさ”を表していますが、動粘度は“流体の動きの伝わりやすさ”を表しています。動粘度は「粘度」を「密度」で割って計算したもので、単位はストークス(St){cm2/s}またはセンチストークス(cSt){mm2/s}を用います。動粘度が大きいほど、流体の動きは伝わりやすいといえます。 



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 動粘度が大きいほど、流体の動きが伝わりやすい。
Q2 潤滑油の汚染度の測定方法の1つに「SOAP法」がある

A1 ◯:題記のとおりです。
A2 ×:「SOAP法」は潤滑油系統で発生している異常を検出する方法で、汚染度の測定方法とは異なります。汚染度の測定方法には、重量法のほかに、NAS等級、ミリポア重量法、不溶解分法などがあります。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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