軸受編:【第11回】すべり軸受の分類

 すべり軸受に発生する劣化・損傷には、焼付き、損傷、きず、摩耗、疲労・剥離、腐食などがあり、これらは大きな故障につながる可能性があります。そのため、安全性を重視した設計や、慎重な製作・組立・据付け・試運転を行うことで、信頼性を上げて故障発生率を低くすることが求められます。

 とくに通常運転時においては、潤滑不良による劣化・損傷を起こさないように、異物混入などがない運転環境を維持・管理することが重要となります。

 すべり軸受を使用する場所に応じて潤滑状態で分類すると、以下の3つになります。

固定潤滑(無潤滑) 低速・低荷重で潤滑油が使用できない場所に使用します。(無給油ブッシュ)
→無給油:低摩擦材タイプ:PTFEなどの樹脂、スズ、鉛といった軟質金属を用いる
→無給油:固体潤滑材付加タイプ:黒煙、二硫化モリブデンなどを用いる
境界・混合潤滑 油潤滑を基本としており、摺動面に十分な油膜圧ができない場所に使用します
→含油タイプ(境界潤滑):含油焼結金属、含油黒煙などを用いる
→潤滑油タイプ(混合潤滑):樹脂、リン青銅などを母材に被覆して用いる
流体潤滑 軸と軸受の摺動面に潤滑流体の流体膜を形成できる場所に使用します

すべり軸受の種類

<ひとくちメモ> 無給油軸受は、なぜ焼き付かない?

無給油軸受は自己潤滑性がある材質を使うことで、無給油での使用を実現しています。仕組みとしては、潤滑油を含浸させた素材を使い、摩擦熱によって温められた潤滑油が溶け出すことで潤滑を行うのが一般的です。なお、無給油軸受で使われる材質は「金属」「複層」「樹脂」に分けられます。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 無給油軸受は、主に低荷重で潤滑できない場所に使われる
Q2 無給油軸受に使われる材質には、「金属」「複層」「樹脂」に分けられる

A1 ◯:題記のとおリで、主にOA機器やAV機器によく使われます
A2 ◯:題意のとおりです。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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