油本 雄三 Yuzo ABURAMOTO

油本 雄三(あぶらもと ゆうぞう)

日本能率協会コンサルティング
プロフェッショナルアドバイザー
TPMコンサルタント

共に学び、共に成長する——達成感のある改善活動を!

◆広い視野を持ち、行動できる人づくりが重要

 ものづくりの現場では、一人あたりの持ち台数の増加、人材の多様化、働き方改革やカーボンニュートラルの取り組みなど、環境の変化から厳しい状況にあるといえます。このような状況下であるからこそ、広い視野に立って問題解決ができる人づくりが大切です。

 ものづくりの問題解決においては、常に以下の4つの視点を持つことが重要だと考えています。

  1. 鳥の目:全体像を俯瞰して、工程のネックを明らかにする
  2. 魚の目:世の中の流れ、環境の変化を読む
  3. 虫の目:現場・現物・現実、原理・原則に基づいて行動する
  4. コウモリの目:従来の常識を疑う、発想を変える

 とくに、3.虫の目の「現場・現物・現実、原理・原則の考え方(5ゲン主義)」は、昔もこれからも問題解決の基本であり、TPMのコアの考え方です。問題のある現場に行き、現物を見て、データで現実を示す。さらに原理・原則で要因を展開し、手を打てば、多くの問題は解決できます。

 さらに、何度も維持と改善のPDCAを回して仕組みに落とせば、問題は再発しません。「PM分析」「品質保全」は、この5ゲン主義を具体的な方法論に落とした考え方・哲学であると思っています。TPMの柱および考え方をベースとして、上記4つの広い視野の見方で行動できる人が育てば、必ず強い現場をつくることができます。

◆多くのプロジェクトや体質改善活動から職場が大きく変わることを実感

 総合機械メーカーに在職中は、切削・研削・組立工程の生産性向上、廃品縮減、原価低減、工場建設といった多くのプロジェクトに、リーダーとして携わりました。その際はTPMの考え方をベースに、QC七つ道具、統計的解析、IEやJITの考え方・手法を、実務で活用することで成果につなげてきました。そして、これらの経験を踏まえてTPMやTQC推進の責任者として、会社の体質改善活動を企画・運営してきました。

 その成果例として、以下のようなものがあります。

  • 加工工程では、加工点の挙動に着目し、設備診断技術(電力測定)を活用して、ネック工程の生産能力2倍を実現
  • 研削工程では、モノの流し方、レイアウト変更、設備の自動化により、リードタイム半減を達成
  • 切削〜組立工程では、PM分析、QC手法の活用で直行率75%を99%に向上
  • 大手自動車メーカーと共同で新製品のラインを立ち上げ、量産化を実現

 また、安全・環境・エネルギー管理の責任者として、安全道場の設立、BCPの体制整備、カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めてきました。安全・環境・エネルギーの仕事においても、現場・現物・現実で行動することの重要性を痛感しました。

 このような改善活動を通じて、「こんなにも人は変わるんだ」「職場は元気になるんだ」ということを経験してきました。TPM活動は、「ものづくりの変革=人・職場の変革」を具体的に示したものであると確信しています。

◆教育から共育へ、育成から共成へ。共に学び、共に成長

 人は小さな成功体験の積み重ねで力を付け、大きな成功体験で自信を得ることができます。改善活動を通して、現場の第一線の方と管理・監督者が共に育ち、共に成長していく姿を見たいと思います。

 私は、現場のど真ん中に立って、同じ痛みを感じ、達成の喜びを分かち合いたいと思っています。

 改善活動を通して、活き活きとした人づくり、職場づくりを一緒になってやりませんか。


■油本雄三プロフィール
◆専門分野:工程改善支援
◆TPM:個別改善、自主保全、品質保全、教育訓練、安全・衛生・環境

油本雄三

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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