歯車編:【第19回】歯車の歯形と特徴

 歯車の歯には、曲線形状(歯形)の違いによって「インボリュート歯形」と「サイクロイド歯形」に分類できます。インボリュート歯形には「インボリュート曲線」といわれる曲線、サイクロイド歯形には「サイクロイド曲線」といわれる曲線が用いられています。

 糸を円筒に巻き付けて、ゆるみなく引きほどいていった際に、糸の先端が描く曲線を「インボリュート曲線」といいます。一方、直線に沿って円がすべらずに回転するときの円周上の定点の軌跡として得られる曲線を「サイクロイド曲線」といいます。

インボリュート曲線とサイクロイド曲線

インボリュート曲線とサイクロイド曲線


<インボリュート歯形の特徴>

  • 形状がシンプルで加工が簡単、価格が安い
  • 歯車のかみ合いがスムーズで静かな伝達が得られる
  • 圧力角が一定で、摩耗の少ないなめらかな動作が得られる
  • 歯車の中心距離の誤差が、回転精度やかみ合いに影響しない(最大のメリット)
  • 歯への負担が少なく、頑丈で長年使用できる

<サイクロイド歯形の特徴>

  • 歯元の面積が大きいので強度が高い
  • かみ合う歯同士に、干渉がまったく発生しない(最大のメリット)
  • 歯元面が広く、歯形にすべりがない
  • 完全な転がりなので回転抵抗が低い
<ひとくちメモ> どちらの歯形が多く使われている?

「インボリュート歯形」が圧倒的に多く使用されています。サイクロイド歯形は加工が難しく高価で、軸間距離が正確でなければ正しい運動が伝わりません。そのため高級時計や精密機械などの限られた範囲での使用に限られています。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 インボリュート歯形は、かみ合い歯同士で干渉がまったく発生しないのが特徴である
Q2 サイクロイド歯形は、主に動力用に使用されている

A1 ×:かみ合い歯同士で干渉がまったく発生しないのは、サイクロイド歯形です。
A2 ×:主に動力用に使用されているのは、インボリュート歯形です。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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