軸・軸継手編:【第55回】軸継手の種類と特徴

 モーター、ポンプ、クラッチなどの機器を組み合わせて使用する場合に、それらの軸と軸をつなぐ働きをするのが軸継手です。また、長い伝動軸を使用する場合は、加工・運搬上の制約でいくつかに分割して製作するので、これらを連結する場合も必要になります。

 軸継手は、一度結合したら分解や修理などのとき以外は取り外さないもので、頻繁に結合や解放を行うものを「クラッチ」として分類しています。

 軸継手の主な種類・特徴は以下のようになります。

【固定軸継手】

 構造が簡単で安価な軸継手で、軸継手部がたわんではいけない場所や正逆回転でバックラッシュを避けたい場所などに用いられる。

<主な種類・特徴>
  • 箱形軸継手/筒型軸継手(下図):構造が簡単で安価、軽負荷個所の軸継手で、精度が不要な場所に用いられる
  • フランジ形固定軸継手:構造が簡単で安価な軸継手で、精度が不要な場所に用いられる
  • 鋳造つば軸継手:船のプロペラシャフトなどに用いられる

箱形軸継手

【たわみ軸継手】

 2軸の芯ずれを吸収できる軸継手で、2軸の芯出しが困難な場所や発熱などで芯が狂う場所、トルク変動が大きい場所などに用いられる。

<主な種類・用途>
  • フランジ形たわみ軸継手(下図):たわみ量が最小で、衝撃荷重を吸収する軸継手
  • 歯車形軸継手:たわみ量が最大で、大容量の伝動に向くが高価な軸継手
  • チェーン軸継手:たわみ量が中くらいで、衝撃荷重には不向きな軸継手
  • ゴム軸継手:振動および衝撃荷重を吸収する、種類が多彩な軸継手

フランジ形たわみ軸継手

【自在軸継手】

 他の継手では接続できない角度で2軸が交差する場所や、平行な2軸の軸心が大きく違う場所などに用いられる。

<主な種類・用途>
  • 不等速自在軸継手(下図):一般にユニバーサルジョイントと呼ばれ、ベアリングや伝導機器に用いられる
  • 等速自在軸継手:ベンディックス形、バーフィールド形などがあり、自動車用や一般産業機械用に用いられる

不等速自在軸継手




<ひとくちメモ> 軸継手の選定ポイント

軸継の選定要素は、使用条件や軸継手本体の特性および価格などになります。以下に示す各軸継手の特徴をよく理解して、機械の諸条件と合わせて選定することが大切です。
・フランジ軸継手:偏芯許容値=0.03㎜以下
・フランジ形たわみ軸継手:起動時の衝撃を吸収、たわみ量=小(偏芯許容量0.05㎜以下)
・歯車形軸継手:大容量伝動、高価、たわみ量=大(偏角許容量1.5°以下)
・チェーン軸継手:衝撃荷重不適、正逆可、たわみ量=中(チェーンピッチの2%以下)
・タイヤ型軸継手:起動時の衝撃を吸収、たわみ量=大



<こんなときどうする> 軸心出しでは何を調整すればいい?

フランジ軸継手で結合しているモーターとポンプを分解した際は、新たに「軸心出し」(シャフトアライメント)が必要になります。ここではストレートエッジとスキマゲージとダイヤルゲージを使った「軸心出し」の一例を紹介します。
図の①②③④を調整して、「軸心出し」を実施してください(図の測定機器の位置は、調整個所によって変わります)。
・ストレートエッジ:大まかな平行、軸心を調整する
・ダイヤルゲージ:上下左右の軸心の振れを測定して調整する(メーカー指定値)
・スキマゲージ:フランジ間のすきまを調整する(メーカー指定値)



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 たわみ軸継手は芯ずれを吸収できるので、心出しは必要ない
Q2 自在軸継手には、不等速自在軸継手と等速自在軸継手がある

A1 ×:心出しは基本であり、必要です。
A2 〇:題意のとおりです。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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