シール編:【第58回】非金属ガスケット

 ガスケットには、非金属ガスケット、金属ガスケット、セミメタリックガスケット、液状ガスケットなどの種類があり、温度、圧力、取付け状態、締付け圧力などの使用条件に応じて選択します。

 非金属ガスケットは非金属材料でつくられるもので、1つの材料で構成されるものと複数材料を混合したものがあります。金属ガスケットやセミメタリックガスケットに比べて軟質で、なじみ性に優れていることからシールの締付け圧力を低くできるので、機器の接合部に幅広く使用されていますが、低温・低圧での使用となります。

 ガスケットによっては、応力緩和特性(締付け後にガスケットの応力が連続的に低下して締付けがゆるむ)や、熱・圧力が間欠的に上下する場合のシール性なども考慮する必要があります。たとえば、PTFEや石綿ジョイントシートを用いたガスケットは、応力緩和特性があるので増締めが必要となります。

 なお、シール用素材はエラストマー(一般的に柔軟性と弾性を持ち、射出成形が可能な高分子素材)を筆頭に、植物繊維、無機繊維、各種プラスチック、金属類など、ほとんどが工業用材料を加工してつくられています。

 下表に非金属ガスケットの主な種類と特徴を示します。

非金属ガスケット 種類(エラスマー含む) 特徴
合成ゴムガスケット
天然ゴム(NR)、スチレンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム(FKM)、シリコンゴム(VMQ)、ウレタンゴム(AQ)など

・小さな締付け圧でよく、シール面のうねりや若干悪い手もなじみ性が良い
・薬品、熱、締付けによる劣化があり、寿命が不安定な面がある

石綿ジョイントガスケット
エラストマーとして天然ゴム(NR)、スチレンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)を使用

・配管、機器など、もっとも広く使用されている
・温度と圧力の範囲が広く、加工が容易で安価
・ガス系統への浸透漏れが起こる
・使用流体により腐食が発生する

PTFEソリットガスケット

・耐熱、耐寒、耐候、耐薬品に優れている
・圧力緩和性が悪い

PTFE包みガスケット

・耐熱、耐寒、耐候、対薬品に優れている
・PTFEで包み、応力緩和性を改善




<ひとくちメモ> PTEF=テフロン?

PTFE(poly tetra fluoro ethylene/ポリテトラフルオロエチレン)はフッ素原子と炭素原子のみからなるフッ化炭素樹脂で、非粘着性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、電気特性、耐熱性などの特性を備えています。PTFEは「四フッ化エチレン」や「4F」と表記される場合もあります。「テフロン」は、PTFEを開発した米国のデュポン社の登録商標なので、混用されることがあるようです。



<こんなときどうする> PTFEガスケットを増締めしたい!

配管用フランジにPTFEガスケットを使用してフランジボルトを締め付けると、締付け力でガスケットの厚みが徐々に減少して、フランジボルトが緩んできます。そのため、初期から一定時間経過したら増締めを実施する必要があります。
一方、ポンプなどに使用するグランドパッキンは、適量な水漏れによって空気の侵入防止、摩擦熱の冷却、パッキン摩耗の軽減といった効果をもたらすので、増締めをして水漏れを止めてはいけません。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 非金属ガスケットは、すべて複数の非金属材料を混合した構成となっている
Q2 ガスケットによっては、応力緩和特性を考慮する必要がある

A1 ×:非金属ガスケットは、1つの材料のみのものと複数材料を混合したものがあります。
A2 〇:ガスケットによっては、応力緩和特性やシール性を考慮する必要があります。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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