シール編:【第59回】メタルガスケット、セミメタルガスケット、液状ガスケット

 「メタルガスケット」は金属材料のみでつくられており、強度や耐熱性に優れています。材料によっては、耐食性やなじみの良さなどに優れたものがあります。

 「セミメタルガスケット」は、ステンレス鋼板などの金属と、膨張黒鉛などの非金属を組み合わせたもので、非金属ガスケットに比べて高温・高圧で使用されます。

 「液状ガスケット」は常温で流動性のある物質(シリコンなど)が主成分で、接合面に塗布すると一定時間後に乾燥または均一化して、弾性皮膜あるいは粘着性の薄層を形成します。作業性が良く、厚みや締付け力などの計算が不要といったメリットがあります。

  種類(エラスマー含む)  特徴
 メタルガスケット ノコ歯形メタルガスケット ・高音・高圧のガスや蒸気に使用
セミメタルガスケット 渦巻き形ガスケット
(石綿、黒鉛、PTFEフィラー
・セミメタルガスケットの代表格
・圧縮復元性に優れ、完全シール化が可能
液状ガスケット 1種:粘着性(不乾性+粘着性保持)
2種:粘弾性(粘着性+弾性保持)
・接合部の油密、水密、気密が優れている



 なおガスケットの選定では、下記のような要件に留意します。

  • ハウジングに比べてガスケットの方が軟質であること
  • 温度変化に追従する弾性があり、永久変形が小さいこと
  • 小さな締付け力でシール機能を発揮すること
  • 流体を浸透して漏れを起こさないこと
  • 機械的、熱的、化学的に安定性があること
  • 取外し(はがし)が容易なこと

<ひとくちメモ> ガスケットの再利用は可能?

一度使用したガスケットの再利用は、ガスケットの種類や使用期間を問わず推奨しません。一度でも使用したガスケットは、フランジの凹凸に合わせて変形してしまいます。そのためフランジとガスケットとの間に隙間が生じて、漏れが発生する可能性があります。



<こんなときどうする> 液状ガスケットを併用してみよう!

ガスケットのシール面は凹凸がなく平滑に仕上がっているのが理想的ですが、実際には精度を高く仕上げるのが困難な場合や、加工費用が大きな負担となる場合があります。このようなケースは、液状ガスケットを併用するとよいでしょう。液状ガスケットが凹凸部分にしっかり入り込んで、密着性・圧縮性を向上させてくれます。ただし、使用環境をしっかり理解して選択するとともに、使用方法や要領(前処理、塗布量、締付け力など)を守って作業しましょう。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 セミメタルガスケットは、非金属ガスケットと比べて高温・高圧といった条件下では用いられない
Q2 一度使用したガスケットは再利用しないのが望ましい

A1 ×:非金属ガスケットに比べて高温・高圧で使用されます。
A2 〇:題意のとおりです。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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