シール編:【第61回】パッキン材料と作動油

 作動油は使用する環境や条件によって、鉱油系作動油、水・グリコール系作動油、W/Oエマルジョン系作動油など、多くの種類が用意されています。これらの作動油に合わせて、パッキンも機械的、熱的、化学的な安定性が要求されます。

 たとえば、鉱油系作動油の場合はパッキン材料がどれでも使用できますが、リン酸エステル系作動油の場合はフッ素ゴムか四フッ化エチレン(PTFE)樹脂を選択します。ただし、100℃以上の高温で使用する場合は、鉱油系作動油でも耐熱性の高いフッ素ゴムを使用した方がよいでしょう。

 下表にパッキン材料と作動油との適合性を示します。

  パッキン材料
 ニトリルゴム  ウレタンゴム  フッ素ゴム  四フッ化エチレン樹脂
作動油の種類 鉱油性作動油
水・グリコール系作動油 ×
W/Oエマルジョン系作動油
O/Wエマルジョン系作動油
リン酸エステル系作動油 × ×
脂肪酸エステル系作動油
HWBF(高含水作動液) ×

〇は使用可、×は使用不可、△はシールメーカと相談




<ひとくちメモ> 使い捨て手袋にも使われている合成ゴム

トリルゴムは主要な合成ゴムの1つです。耐油性、耐摩耗性、耐老化性に優れることから、Oリングやガスケットなどのシール材に用いられています。また、吸水性がきわめて低いという特徴もあるので、使い捨て手袋の材料としてもよく用いられています。



<こんなときどうする> ニトリルゴムパッキンの膨潤対策

ニトリルゴムを取り外したら、全体に軟らかくブヨブヨに膨潤していたことはありませんか? 膨潤の原因は、油とパッキンの組み合わせ不適と洗浄液の影響が考えられます。耐油性を確認して、パッキンまたは作動油を変更しましょう。また、洗浄液も適正液に変更しましょう。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 鉱油系作動油であれば100℃以上の高温で使用する場合でも、パッキン材料は何を選択しても問題ない
Q2 リン酸エステル系作動油は、ニトリルゴムパッキンで適応できる

A1 ×:100℃以上の高温で使用する場合は、鉱油系作動油でも耐熱性の高いフッ素ゴムを使用した方が良いでしょう。
A2 ×:フッ素ゴムか四フッ化エチレン(PTFE)樹脂を選択します。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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