シール編:【第62回】回転運動用パッキン

 回転運動用パッキンにはメカニカルシール、オイルシール、グランドパッキンなどがあります。その中で代表格といえるオイルシールは、自動車、業機械、建設機械、圧延機、工作機械など、幅広く使用されています。

 メカニカルシールは、高圧、高温、高速または極低温でも使用可能なシールです。グランドパッキンは、バルブ、回転、往復動ポンプなどに使用されています。

 下表に、回転運動用パッキンの形状と特徴および用途を示します。

区分 シール
分類
シール名 形状 特徴/用途
パッキン(回転) 接触型 オイルシール ・軸に対してシールリップの内径を小さくし(しめしろ)素材やばねの緊迫力によって漏れを防止する構造となっている。
・比較的低圧の潤滑系統において、回転部からの油漏れおよび外部からの塵埃、水などの浸入を防止するのに利用されている

メカニカル
シール

・密封端面の摩耗に従って、軸方向に動くことができる従動リングと動かないシートリングからなり、スプリング作用による面の接触圧力で密封する
・軸封部からの漏れがきわめて少なく、連続回転使用が可能で高温、高圧、高速、極低温条件下でも使用できる
グランド
パッキン
・一般的に断面が角形で紐状または円筒状に成形されており、パッキンを押さえ込んで圧縮することで緊迫力を発生させ、漏れをシールする
・ポンプなどに使用する際は、冷却、摩耗、潤滑などを目的に若干漏らしながら使用する



<ひとくちメモ> オイルシールの取扱いポイント(装着前)

オイルシールを装着する前に、以下のような注意が必要です。
・オイルシールのリップ部は生命線なので、使用時まで開封しない(劣化・傷の防止)
・洗浄を行う際は、使用潤滑油で行う(膨潤対策)
・使用前にリップのきずの有無、バネの位置を確認する(無傷であること、ばね力が重要)
・軸の角の面取りを確認する(リップのきずの原因となる)
・ハウジングの面取りを確認する(かじり・むしれの防止)



<こんなときどうする> グランドパッキンから水が漏れる!

ポンプのグランドパッキンから水漏れしている場合に、適正な漏れ量の目安を紹介します。一般に、適正漏れ量は「糸を引く程度」といわれ、数値的には5〜5ml/min程度が良いとされています。水滴で見た場合、1mlを16〜20水滴で換算すると、1秒間に2〜16滴程度といえます。グランドパッキンがなじんだ状態で、平均4〜6滴程度でしょう。
ただし軸径や温度で、適正漏れ量の目安も変わります。一度、メーカー奨励値を確認しましょう。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 オイルシールのバネ付きは、高圧にも適応できる
Q2 メカニカルシールは、連続回転使用が可能である

A1 ×:オイルシールは低圧の潤滑系統で使用するもので、高圧は使用できません。
A2 〇:題意のとおりです。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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