材料一般編:【第30回】非鉄金属(2)ベースメタル
前回は非鉄金属が「ベースメタル」「プレシャスメタル(貴金属)」「レアメタル」の3つに分類されることを説明しましたが、今回は「ベースメタル」について掘り下げて説明します。
ベースメタルは埋蔵量・産出量が多く、精錬も容易な金属で、アルミニウム、鉛、亜鉛、銅、スズなどが多く利用されています。建設、自動車、電気機器、造船などの産業分野のほか、管楽器や硬貨といった日常品にも使用されています。なかでも、アルミニウムや銅は合金として幅広く用いられています。
以下に、主なベースメタルの特性と用途をまとめて示します。
元素 | 特性 | 主な用途 |
アルミニウム |
非鉄金属でもっとも生産量が多い。軽い、さびにくい、電気を通す、など | 調理器具、外装品、自動車鋼板、橋梁、航空機部品など |
銅 | 生産量はアルミニウムに次ぐ。電気を通す、熱をよく伝える、耐食性が高い、など | 電線、管楽器、トロフィー、硬貨、自動車部品、仏具など |
鉛 | 軟らかい、自然環境下で耐食性が高い、硫酸に強い、放射線を吸収する、など | 自動車用蓄電池、管球ガラス、鉛菅、遮音・遮蔽用鉛板など |
亜鉛 | 消費量は銅に次ぐ。耐食性に優れる(酸化被膜)、融点が低い、など | 防食塗料、トタン、ダイカスト、自動車用鋼板、電極、化学薬品、真鍮など |
すず | 軟らかく展延性に優れる、空気中や水中でさびにくい、寒冷環境に弱い、など(※展延性:素材が破断せずに柔軟に変形する限界) | ブリキ、メッキ、青銅、ベアリングメタル、ハンダ、オルガンのパイプなど |
<ひとくちメモ> 「卑金属」という呼び方の由来 「ベースメタル」のことを、「貴金属」の対義語である「卑金属」と呼ぶ場合もあります。「卑金属」という言葉は、イオン化傾向が高い(酸に対して不安定で水の中に溶け出しやすくなる)金属を「卑な金属」と呼ぶのが由来なので、卑しいという意味はありません。 |
◆Q&Aで理解度チェック!
Q1 アルミニウムは合金として幅広く用いられ、軽い、さびにくいといった特性がある
Q2 スズはベースメタルの中では硬い金属なので、寒冷環境に強いという特性がある
A1 〇:題意のとおりです。
A2 ×:スズは軟らかく展延性に優れ、寒冷環境に弱いという特性を持ちます。
■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境
輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。
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