軸・軸継手編:【第53回】軸とはめ合い①

 軸受の内輪または外輪に、軸あるいはハウジングと相互にはまり合う関係を「はめ合い」といいます。

 はめ合いの不良は騒音や異常な温度上昇を起こすだけでなく、軸の振れ回り振動が大きくなるなど、多くの不具合原因にもなります。

 軸と穴のはめ合い度合いを「はめ合い公差」と呼びます。また、軸と穴には「しめしろ」と「すきま」の関係があります。軸が穴より大きい場合の直径の差を「しめしろ」、軸が穴より小さい場合の直径の差を「すきま」といいます(下図参照)。

はめ合い

 はめ合いには、「しまりばめ」「すきまばめ」「中間ばめ」の3種類があります。軸と軸受の接合において、非常に大切なことなので覚えておきましょう。

【しまりばめ】

 穴の最大寸法より軸の最小寸法が大きい場合(等しい場合も含む)のはめ合いで、「しめしろ」の状態。
・最大しめしろ=軸最大寸法-穴最小寸法
・最小しめしろ=軸最小寸法-穴最大寸法

しまりばめ

【すきまばめ】

 穴の最小寸法より軸の最大寸法が小さい場合のはめ合いで、穴と軸間は「すきま」がある状態。
・最小すきま=穴最小寸法-軸最大寸法
・最大すきま=穴最大寸法-軸最小寸法

すきまばめ

【中間ばめ】

 穴の最小寸法より軸の最大寸法が大きい場合、かつ穴の最大寸法より軸の最小寸法が小さい場合のはめ合いで、寸法によって「しめしろ」や「すきま」ができる。

中間ばめ




<ひとくちメモ> 「しまりばめ」「中間ばめ」「しまりばめ」の使い分け

はめ合いの種類は、一般的に用途や機能などによって次のように使い分けられています。

・しまりばめ:取外し不要で、強固な締結力が必要な場合など
・すきまばめ:軸を回転させる場合、頻繁に取外しが必要な場合、安価を狙う場合など
・中間ばめ:高精度な軸の位置決めをする場合、取外し可能で精度が必要な場合など



<こんなときどうする> 軸から抜きたい!

軸と軸受のはめ合いを、どのように選定すればよいか悩んでいませんか? 本連載の第16回「軸受とはめ合い」でも述べましたが、下記のように選定するとよいでしょう。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 「しまりばめ」は、軸と穴を強固に連結したい場合に用いるはめ合いである
Q2 軸受で内輪回転、外輪静止、荷重静止の場合、内輪と軸は「すきまばめ」とする

A1 〇:題意のとおりです。
A2 ×:「しまりばめ」にして、軸と内輪をしっかり固定します。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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