軸・軸継手編:【第54回】軸とはめ合い②

 はめ合いの方式には、「穴基準」と「軸基準」の2種類があります。

【穴基準】

 穴径を基準にして、軸の種類と等級を選ぶ。

  • 公差域はアルファベットの大文字で表す(例:「H5」→H=穴の公差域、5=等級 ※公差はJISが定める「はめあい公差」の表で調べられる)
  • 穴径が大きい順にAから始まり、Hが基準寸法と一致する(例:「Φ40H8」→穴径=40㎜、最大許容寸法=+0.039㎜、最小許容寸法=-0.0㎜ ※この場合は「しまりばめ」にしている)

穴基準

【軸基準】

 軸径を基準に、穴の種類と等級を選ぶ。

  • 公差域はアルファベットの小文字で表す(例:「h5」→h=軸の公差域、5=等級)
  • 軸径が小さい順にaから始まり、hが基準寸法と一致する(例「Φ40f7」→軸径=40㎜、最大許容寸法=-0.025㎜、最小許容寸法=-0.05㎜ ※この場合は「すきまばめ」にしている)

軸基準

 どちらの方式を選定するかは、対象の特性と設計者の意図によりますが、一般的には「穴基準」が多く採用されています。

 常用される「穴基準」および「軸基準」のはめ合いは、JIS B 0401-1:2016 で規定されています。
日本産業標準調査会のWEBで閲覧可能ですので、そちらを参照してください。

日本産業標準調査会のページへ >




<ひとくちメモ> 「穴基準」が多く採用されている理由

「穴基準」が多く採用されている理由は、穴に合わせて軸を加工する方が効率的だからです(旋盤加工やワンチャッキングが行える、精度が出しやすい、軸の測定が容易など)。穴加工は、ドリルやリーマ加工などの作業性が悪く、精度が出しにくいほか、穴の計測も面倒で効率が悪くなります。



<こんなときどうする> 「焼き」と「冷やし」 どちらを選ぶ?

大きい軸受の場合、圧入にも大きなプレス装置が必要となるため、現場での「はめ合い作業」が困難です。そのような場合は、加熱による方法(焼きばめ)または冷却による方法(冷やしばめ)で「はめ合い作業」を行います。
どちらも2つの金属の熱膨張比を利用した方法で、作業の容易性や品質確保などを考慮して、焼きばめか冷やしばめかを選択します。
なお、ベアリングヒータやクーリングマシンなどの装置が必要となるので、非定常作業となる場合は、安全や品質を考慮して専門業者に依頼するのがよいでしょう。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 一般的に、はめ合いは「穴基準」が多く採用されている
Q2 穴基準の場合、公差域はアルファベットの小文字で表される

A1 〇:題意のとおりです。
A2 ×:「穴基準」の公差域は、アルファベットの大文字で表されます。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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