【NO.15】ロス別の改善ステップ⑨ 不良ロス

不良ロスとは

 不良によるロスは、

  • 廃棄となったコストのロス
  • 不良をつくってしまった時間のロス(人作業の場合は工数ロス)

に大別されます。どちらでテーマアップしても、使用する改善のステップは同じです。

 また、不良率の低減といった上位方針からテーマアップすることもありますが、この場合も同様です。考えるべきは品質をつくり込む条件を明確にし、不良の発生そのものをなくすことです。ただし効果の確認では、両面で効果を把握する必要があります

不良ロス改善のステップ展開

 不良ロス改善のステップを下表に示します。

ステップ 項 目 活動内容

ステップ1

不良の現状把握

・不良内容の層別
・改善目標の設定
・サブテーマの設定
ステップ2

復 元

・職場の決め事の洗い出し
・決め事に対する「守られ度」の評価
・あるべき姿への復元
・結果の確認と評価
ステップ3 要因分析 ・要因分析の実施
ステップ4 調査・対策の実施と結果確認 ・要因の徹底的な調査
・復元・改善の実施
・結果の確認
ステップ5 条件設定 ・QMマトリックスの作成
・基準・標準類の改訂
ステップ6 条件改善 ・「少・長・短」活動
ステップ7 条件管理 ・点検チェックシートの改訂
・傾向管理の実施


ステップ1:不良の現状把握

 このステップでは、不良の実態を明らかにすることにより、改善対象とする不良削減のテーマを絞り込みます。

 (1) 不良内容の層別
 職場(または工程)で発生している不良を、過去のデータから現象ごとに層別していきます。不良モードが明確になったら、現状の不良発生件数(または金額、ロス率)を調査し、パレート図を作成します。

 (2) 改善目標の設定
 職場の不良ロス改善の目標を設定します。不良ロス金額、不良率、歩留まりといった工場・部門の方針や職場の課題からの必達目標があれば、それを目標にします。

 (3) サブテーマの設定
 不良モードのパレート図から問題の大きいものを選定し、サブテーマとして設定します。
 サブテーマの達成目標は基本ゼロです。目標を達成するためには、いくつのサブテーマをゼロにしなければならないかを明確にし、主担当者、改善スケジュール(納期)を設定します。
 ステップ2以降はサブテーマ単位で進めます。この改善を繰り返し回すことで、不良ロス改善の目標達成を実現します(図表3・5・2)。

ステップ1の展開イメージ

展開イメージ

ステップ2:復 元

 ステップ1で設定したサブテーマに対して、不良を発生させないという視点から、守るべき決め事の洗い出しを実施し、その守られ度合いの評価を行います。
 評価で見つけた不具合は、あるべき状態に戻すことにより、不良が減るのかどうか、つまり現状の決め事を守るだけで良い結果が出るのかどうかを確認していきます。

 (1) 職場の決め事の洗い出し
 不良を発生させないために、職場で実施している現状の決め事を明確にします。つまり、品質をつくり込むために守るべき項目です。
 項目はQC工程表、作業標準、設備管理基準、加工条件表などを参考にするとよいでしょう。さらに、サブテーマに選定した不良と洗い出された決め事に関係性があるかどうかを、1つひとつ精査していきます。

 (2) 決め事に対する「守られ度」の評価
 職場の決め事はあっても、実際にはさまざまな理由で守られていないことが少なくありません。ここでは、サブテーマに選定した不良と関係があると考えられる決め事の実際の守られ具合(守られ度)を、現場・現物で調査します。

 (3) あるべき姿への復元
 守られていない決め事が見つかった場合は、正しい姿に戻すこと(復元)を実施しなければなりません。決め事を守られていないために、品質の不具合が起きていることも多くあります。ここでは、決め事を確実に実施することが大切です。

 (4) 結果の確認と評価
 現状のあるべき状態に戻すことによって、結果はどうなったかを確認します。良くなったものの目標のゼロにまでは至っていない場合は、目標達成のために次の要因解析に進みます。

ステップ3:要因分析

 現状の決め事を守っても不良が減らない、ゼロにならないということは、現状の決め事では「品質に対する守るべき事柄に抜けがある」と考えます。ここでは、ゼロにならない不良モードに対し、不具合の徹底的な現象調査と、理屈で要因を残らず洗い出す要因分析を実施します。

 要因分析では、原理・原則の理解に基づいて現象を物理量の変化に置き換え、加工のメカニズム、設備や装置の機能・構造の理解に基づいて考えられる要因を検討することが大切になります。

 (1) 現象を理屈で考える
 不良は加工点で発生しています。そこで、加工の原理・原則を理解するとともに、不良の現象が発生する理屈を考えます。その際に理解を助けるのが機構図です。ぜひ描いてみてください。
 不良現象の発生にはどのような物理量の変化が考えられるのか、さらにその物理量はどのような条件から成り立っているのか検討します(現象の発生するメカニズムの整理)。

 (2) 現象が起こる条件の洗い出し
 現象の発生するメカニズムを踏まえて、現象が起こりうる条件を洗い出します。
 まずは、設備の各ユニットが果たすべき機能を果たさなくなった場合、不良発生のメカニズムに結び付く(関係する)かどうかを検討します。次に不良に関係すると考えられるユニットについて、機能の基準値を確認し、実際に現場現物で基準値内かどうかを測定し、不具合の有無を確認します。

 (3) 分析の深堀
 ユニットレベルで機能の測定ができなければ、ユニットを細分化して、分析の深堀りをしていきます。
 機構図、図面、部品表をもとにして、サブアッセンブリーレベルで、さらには部品レベルでと細分化して、不良発生のメカニズムに関係するかどうかを調べます。その際には、現象が起こりうる要因を理屈で考え、すべてを洗い出しましょう。

ステップ4:調査・対策の実施と結果確認

 ステップ4では、ステップ3で実施した要因分析の結果にしたがって要因を徹底的に調査し、不具合のあったものについては、復元・改善を行います。

 (1) 要因の徹底的な調査(不具合の抽出)
 分析で洗い出された要因に対し、徹底的に調査をします。そのポイントは、すべての要因に対してあるべき姿と比較し、欠陥の有無を調査することです。考えられるすべての要因に対して調査を実施しましょう。

 (2) 復元・改善の実施
 調査で発見した不具合に対し、復元または改善を行います。ここでのポイントも、重点思考をせずに不具合すべてに対して手を打つことです。それは、慢性的な問題は原因をはっきり断定できないからです。
 思い込みや大きな欠陥だけに目をうばわれては、不良ゼロにはなりません。一時的に結果が出ても、すぐ元の状態へ戻る場合があるので、手を抜かずに実施すべきです。

 (3) 結果の確認
 分析で洗い出された要因に対して復元・改善を実施することにより、サブテーマの不良の発生が下がったか、ゼロになったかを確認します。

ステップ5:条件設定

 このステップでは、不良をつくらない状態を維持するための項目を整理します。

 (1) QMマトリクスの作成
 品質異常はさまざまな標準や基準と関係があります。そこで、一度品質と条件管理の関係をQMマトリクスに一元的にまとめてから、各種の基準書に落とし込むのがポイントです。
 要因分析と調査で、不良をつくらないために管理すべき部位が明確になりました。この1つひとつに「点検項目」「基準値」「方法」「周期」などを設定し、QMマトリクスを作成します。

 (2) 基準・標準類の改訂
 基準・標準類に不良をつくらないための守る項目を追加修正します。基準・標準類の改訂では、この基準を守らなければいけない理由(品質、故障、チョコ停など)との関係がわかるようにするとともに、改訂理由も管理することが大切です。

ステップ6:条件改善

 条件改善では維持しやすくするための改善をしました。これにより、従来よりも維持管理項目が増え、それに費やす時間も多くなっているでしょう。維持時間が長くなることでルールが守られないのであれば、「多い点検個所を集約化して少なくする、点検周期の長期化を考える、1つひとつの点検にかかる時間を短くする」などのを発想した守りやすさの改善アイデア(少・長・短)を検討し、実施していきます。

ステップ7:条件管理

 ステップ6での「少・長・短」活動で維持しやすい管理になったあとは、変動する点検項目に重点を当てて傾向管理を進めていきます。

 (1) 点検チェックシートの改訂
 守るべき人が守るべき項目を確実に守るためには、作業責任・管理責任を果たしていることを確認するためのチェック体制の整備が不可欠です。
 そこで、職位ごとに役割をきちんと果たしているかを管理する点検チェックシートを作成します。

 (2) 傾向管理の実施
 不良発生の予知ができる条件項目をQMマトリックスから抽出し、傾向管理図を作成していきます。傾向管理図に定期的に測定値を書き込み、劣化の傾向を把握していくことにより、不良発生の予知に結び付け、不良ゼロを維持していきます。



次回は「人の効率化を阻害するロス」を解説します。


●著者プロフィール

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。



鐘ヶ江

鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。

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