設備は劣化する、それでも故障は防ぐことができる!

「自然劣化」と「強制劣化」の違い

 設備は劣化します。それでも、設備の故障は防ぐことができます。設備の故障を防ぐ方法、それが「自主保全」です。

 設備には負荷がかかっています。その負荷によって、設備が自然に劣化していくことは避けることができません。こうした劣化を「自然劣化」といいます。一方、設備に汚れやホコリが付いていたり、設備の金属部分同士が接触して擦れていたり、ねじが緩んでいたりすると、劣化が速く進みます。このようなことから劣化が速く進行する状況を「強制劣化」といいます。

 そして、劣化が進んで設備の強度が設備にかかる負荷を下回ると、そこで故障が発生することになります。逆の考え方をすれば、強制劣化を進行させずに、自然劣化の進行に気づいて強度が限界を下回る前に、その部位を復元すれば、設備は故障しないことになります。

※復元:修理でも改善でもなく、元の正しい状態に戻すこと

設備に故障が発生する仕組み

▲設備に故障が発生する仕組み

自主保全能力を身につけることが大切!

 汚れ・ホコリがないこと、金属部分同士が擦れ合っていないこと、ねじが締まっていること――この3つは、どんな設備でも整えておかないといけない条件であり、これを「設備の基本条件」といいます。そして、その基本条件を整える行動が、“清掃・給油・増締め”になります。また、各設備には、基本条件以外にも守るべき条件があります。これを「設備の使用条件」といいます。

 いつも設備のそばにいて、使用しているのはオペレーターのみなさんです。ですからオペレーターのみなさんが、設備の基本条件を整備し、使用条件を守り、日常の運転や点検で劣化の進行に気づいて、それを復元する能力――つまり「自主保全能力」を身につければ、故障の未然防止が可能になります。

 特殊な計測器は不要です。五感で十分です。この自主保全能力を身につけることができるプログラムが、TPM活動の「自主保全7ステップ展開」です。

 故障の要因を理解して、自主保全の7ステップ展開を実践できるようになれば、故障がなくなり仕事がラクになります。そして、「自分でも故障を防ぐことができる」と自信をもって仕事に臨んでいただけるようになれば、これに勝る喜びはありません。ぜひ、自主保全能力を磨き、故障のない設備で、毎日楽しく仕事をしていこうではありませんか!


市野 昌治プロフィール
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:自主保全、品質保全、安全・衛生
JMACプロフェッショナルアドバイザー TPMコンサルタント

市野

精密機械メーカーで自動組立ライン制御システムやオンライン検査器の開発・設計に携わった後、化学メーカーで電気・計装設備の設計および設備管理に従事。プラントの改善と保安の維持に取り組むとともに、TPM活動も牽引する。常に現場の人を大切にする姿勢を貫き、ロス削減だけでなくトラブルの未然防止を実現することをライフワークとしている。海外経験も踏まえて「TPM活動はひとづくり」と実感しており、1人ひとりが考えて行動することを大切に、支援に取り組んでいる。


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