設備診断(簡易診断)技術への第一歩
設備診断には「簡易診断」と「精密診断」がある
設備診断技術とは、設備の状態を定量的に把握して、異常(故障)の原因および将来的な影響を予知・予測することで、必要な対策を立てるために用いる技術です。
設備診断には「簡易診断」と「精密診断」があります
●簡易診断で早期対策と未然防止
簡易診断とは、設備の状態を定期点検で定量的に評価して異常があるかどうかの判別および状態の傾向管理をすることです。簡易診断を精度良く実施すれば、異常に対する早期対策を打つことが可能となります。重大事故や品質異常を未然に防ぐことができるので、非常に重要な活動といえます。
●精密診断で余寿命を予測
精密診断では、簡易診断で異常があると判定された設備について、異常の種類、部位、原因、程度など検査・診断して、設備の余寿命を予測します。この予測値から適切な保全アクションを決定します。一般的には、設備診断に関する知識や経験を持つ技術者が行います。
現在は、異常の内容を解析して自動判定するチェッカーなどが現場で利用されており、それを使いこなすためのセミナーも実施しています。
振動に関する基本用語 まずはこれだけ覚えて
設備には回転機器が多く使用されているため、その振動を測定して異常の有無を調べる方法が多く用いられています。振動は設備や構造物の耐久性・信頼性に影響を及ぼす可能性があるので、その未然防止のために振動を測ることがとても重要になります。
振動を測定する際には、「変位」「速度」「加速度」の3つのパラメーターが用いられます。これらの用語は通常、アルファベット(D、V、A)の略称で示されます。
パラメーター | 単位 | 意味 | 対象となる異常 | 回転機械での適用例 |
変位(D) | μm mm |
振動が往復している幅(距離) | 変位の量または動きの大きさ自体が問題となる異常 | 回転機械の軸振れ 工作機械のビビり現象 |
速度(V) | mm/s cm/s |
変位の時間に対する変化率。振動している速さで、劣化のバロメータ | 動きの大きさと、その繰返し回数(疲労度)が問題となる異常 | 回転機械の振動 |
加速度(A) | m/s2 | 速度の時間に対する変化率。衝撃度を現し、軸受劣化などの指標 | 力の大きさ(衝撃力など)が問題となる異常 | 軸受の損傷による振動 歯車の損傷による振動 |
振動を計測して簡易診断を実施していくためには、これらの基本用語を抑えることが第一歩になるので、ぜひ覚えてください。
末石 章二プロフィール
◆専門分野:設備診断技術支援
大手製鉄会社出身で、鉄鋼・化学・セメント・製紙・電機・食品、その他さまざまな製造現場において、多くの設備診断の経験と実績を積んで現在に至る。また、設備診断セミナーでは豊富な経験に基づき、トラブル解決・故障削減・生産性向上等に診断技術を活用する実践的な方法を、実体験を交えてわかりやすく解説することで高い評価を得ている。
【セミナー情報】
設備診断技術実践セミナー~実習と現場事例~
会場:JMACセミナールーム(東京港区)
開催日:2024年11月12-13日
講師:末石 章二