髙林 るみ子 Rumiko TAKABAYASHI

髙林 るみ子(たかばやし るみこ)

日本能率協会コンサルティング  
プロフェッショナルアドバイザー
TPMコンサルタント  

ものづくりに貢献する管理・間接部門を目指す

◆管理・間接部門の役割と活動体系

 製造現場の改善効果を真に企業の業績向上に結び付けるためには、会社全体をスルーで見る立場にある管理・間接部門の役割が重要になります。
 管理・間接部門のTPM活動は、価値工学に基づく活動体系(下図)で行うことが成功の秘訣です。まず、「教育訓練」とあわせて「事務自主保全活動」で職場の機能(役割)を果たすための“時間づくり”と“人づくり”を行います。次に、経営への直接貢献となる「業務の個別改善活動」へとつなげ、企業価値向上の一翼を担う体質づくりをねらいます。

◆コミュニケーションを重視した活動にするためにツールを活用

 私は一人ひとりの持ち味と潜在している改善力を引き出すことを信条としています。新技術の導入が急がれる今だからこそ、問題を捉える力や関係者と協力して改善する力などを存分に発揮してもらうための“人間力の高い人づくり”が不可欠です。私自身が明るく・楽しく・学びのある活動を展開することで、職場の心理的安全性を高めることにも努めています。心理的安全性が高まることで、本当の意味での“人と人とのつながり(チームワーク)”が生まれ、結果として活動の成果につながっていきます。
 また、会社方針に沿った職場のビジョン実現を目指して、上司とメンバーが十分にコミュニケーションをとって活動できるように、ツールを上手に活用することが重要です。
 具体的なコミュニケーションツールとしては、活動の旗印をメンバーと上司で作成する「挑戦テーマ表」、業務プロセスを見える化して問題点を共有する「巻き紙分析表」、毎日の仕事と職場の機能を体系的に見える化する「WU(ワークユニット)ツリー」、達成すべき“ありたい姿”を上司とメンバーが共有して取り組むべき課題を見える化する「Vトレンド図」などを活用しています。

◆ 全員で事実を確認し合い、ロスを見つけ出して改善する

 管理・間接部門ではロスの概念に乏しく、問題を問題として捉えられない傾向が強いようです。実際の仕事を見える化すると、問題の真実がわかってきます。真実の前には上司も部下もありません。事実を確認し合うことで、全員が問題を共有できます。 
 しかし問題が共有できても、その解決方法は職場や立場によっても異なります。 “現状の姿”と“あるべき姿”を明確にして、そのギャップをロスと捉えて改善を積み重ねることが大切です。思考を重ねて知恵を出し合うことが、現実的で機知に富んだ改善を促すのです。
 全員で事実を確認し合い、ロスを見つけ出して改善することをベースにして、これまで管理・間接部門で行ってきた主な事例を以下に列挙します。

■巻き紙分析によるルーチンワークの工数削減およびリードタイム短縮
■ RPA導入による日次業務の自動化
■ WUツリー活用による事業再編のリードタイム短縮
■教育の自作動画化による運営側の工数削減と受講者の習熟度アップ
■データの視覚化ツール活用による現場責任者へのアドバイス向上 
■業務の標準化によるIoT導入コスト削減
■SDGs視点に基づく社員食堂改善(ロス減、快適度向上、資源化等)

◆女性社員にじっくり向き合い、全員のやる気に火をつける

 経営環境の大きな変化を受けて、ますます女性社員の活躍が求められています。女性社員が持ち味を活かして活躍できる現場には、「参画型&解説型支援」が欠かせません。女性社員の意見をキチンと聴くことで躓きを理解してポイントを共有し、期待と方向性を伝え、活動プロセスをしっかり観察して的確なアドバイスと評価をすれば、イキイキと活動していきます。
 また、女性社員の活動ぶりに、男性社員が良い刺激を受けるという例が多く見受けられます。相互に尊重しあう姿勢を持ち、学びあえる組織にこそ成長があります。女性社員にじっくり向き合い、全員のやる気に火をつけて、企業をより成長させることも、私のコンサルティングにおける非常に重要なポイントになっています。

■髙林 るみ子プロフィール
◆専門分野:管理間接支援
◆TPM:管理間接

2007年から国内外企業のコンサルティングやセミナー講師として活躍中(2021年現在累計:指導会社35社、社内教育21社、セミナー開催106回)。さまざまな業種業態における管理・間接部門での実証研究からオーダーメイドプログラムを提案。また、巻き紙分析やフローチャート分析等の手法を使い、業務内容や情報を流れで捉えた改善に定評がある。その参画型指導により、数多くの企業から管理・間接部門の専門家として大きな信頼を得ている。

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