材料一般編:【第35回】複合材料

 前回は有機材料であるプラスチックの種類と特徴を取り上げましたが、今回は近年注目を集めている複合材料について説明します。

 複合材料とは、2種類以上の基材を組み合わせて、元の基材にない特性を生み出している材料です。代表的な複合材料として、プラスチックを母材に繊維を強化材とした「繊維強化プラスチック(FRP)」と、金属を母材に繊維を強化材とした「繊維強化金属(FRM)」があります。

 下表に、「繊維強化プラスチック(FRP)」と「繊維強化金属(FRM)」の特徴および主な種類・用途を示します。

名称 特徴 種類
繊維強化プラスチック(FRP) ・プラスチックを母材として、ガラス繊維、炭素繊維などを組み合わせたもの

・軽量かつ高強度、剛性、耐熱、耐久性などに優れている
・ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の用途:自動車、産業機械、スマホ・パソコンのケースやカバーなど

・カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)の用途:スポーツ用品、釣り具、自動車、航空機、鉄道など

・アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)の用途:防弾ヘルメット、自動車部品、航空機部品、スポーツ用品など
繊維強化金属(FRM) ・アルミニウムやチタンを母材としてボロン、タングステン、アルミナなどを組み合わせたもの

・軽量かつ強度や剛性、耐摩耗性、弾性などに優れている
・ボロン繊維強化アルミニウムの用途:スペースシャトル部品、ゴルフシャフトなど

・炭化ケイ素繊維強化アルミニウムの用途:航空機部品など

<参考>粒子状の金属強化材を組み合せたものを含めて金属基複合材料(MMC)と呼ばれている

 「繊維強化プラスチック(FRP)」は、軽量で高強度、剛性などが向上する反面、加工が複雑で高価となり、またリサイクル性が悪いといった欠点があります。

 「繊維強化金属(FRM)」も、軽量で高強度、剛性や耐摩耗性などが向上しますが、材料の製造が複雑で大掛かりな装置が必要となり、実用化が限定的となるという欠点があります。現在は、軽量かつ耐熱性などを向上させる用途に使用されています。



<ひとくちメモ> 「金属基複合材(MMC)」「炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)」とは

「金属基複合材(MMC)」は、粒子状の金属強化材(金属酸化物、炭化物、窒化物など)と組み合わせたもので、軽量で耐熱・耐摩耗性が優れ、内燃機関部品に多く適用されています。「炭素繊維強化炭素複合材料(C/C)」は、炭素繊維を母材として炭素を組み合わせたもので、軽くて丈夫、1000℃以上の熱でも繰り返し使用できるため、航空機やロケットの耐熱タイルなどに使用されています。



◆Q&Aで理解度チェック!

Q1 複合材料とは、2つ以上の基材を組み合わせ、元の材料にない特性を生み出した材料のことである
Q2 FRMとは、プラスチックを母材にガラス繊維、炭素繊維などを組み合わせた複合材料である

A1 〇:題意のとおりです。
A2 ×:FRMは、繊維強化金属(Fiber reinforced metal)の略で、金属を母材にしています。FRPは繊維強化プラスチック(Fiber reinforced plastic)の略です。


■福田洋市
◆専門分野:設備保全支援
◆TPM:個別改善、自主保全、計画保全、品質保全、教育訓練、管理間接、安全・衛生・環境

輸送機器メーカーにて製造、保全、安全衛生等の部門で多くの資格を取得しながら経験を積んだ後、工場長として会社統合、工場再編成、生産統合、海外工場支援指導等にあたる。さらに、生産アドバイザーとして生産システム整備や若手人材育成などに携わり、2022年より現職。豊富な実務経験に基づいた、保全技能や改善手法の教育をベースとする人財育成に手腕を発揮している。

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