【第11回】チョコ停改善の7ステップ展開④

4ステップ:結果の確認

 第4ステップでは、第3ステップで実施した不具合の復元・改善、とくに清掃・給油・増締めによる設備の基本条件の整備によって、チョコ停の現象の発生のがなくなったかどうか、またはその発生頻度を確認する。
 第1ステップで作成した活動板を用い、推移と発生周期を確認し、効果の確認とあわせて、現象別の変化を見る。
 残されている現象については、同様に現象の確認やPM分析を実施するとよい。また撲滅できない場合は、PM分析での要因の取り上げ方に漏れの有無の確認や、許容値の見直しも必要である。

5ステップ:最適条件の検討

 第5ステップでは、現状の設備・治工具を前提として、部品・ユニットの取付け条件、加工条件、使用条件を把握する(下図)。

最適条件の検討

最適条件の検討

 取付け条件・加工条件とは、それぞれ具体的に以下のものを指す。
・取付け条件:各部品の取付け位置や、角度、共振状態など、静的精度と動的精度に関するもの
・ 加工条件 :エア圧、真空度、振幅、供給量など、加工の物理的特性値
 さらに設計上の条件と比較したうえで、最適条件の見直しを行う。
 現状の条件は、過去の経験技術の延長でしか決められていない場合が多く、真に最適かどうかは別である。したがって取付け条件、加工条件の見直しを実験的・試行錯誤的に再検討する必要がある。 

6ステップ:MTBFの延長 設計上の弱点の検討・対策

弱点研究とは

 ここまでのステップを実施しても依然としてチョコ停が減少しない場合は、設計上の弱点に起因することが考えられる。そこで弱点研究が必要となる。
 弱点研究とは、設備の機構・部品の材質・形状、治具の構造・形状、検出システム(センサー、システム自体)などの設計上の弱点(問題点)は何かを研究することである。
 一般的には、弱点研究を必要とするケースは、製品共通問題は少なく、製品個別問題のものが多い。製品ごとに適正な構造や条件が整っていないために問題が発生するのである。たとえば
・部品形状にマッチしない治具を使用したために、チョコ停が多発するケース
・設備に弱点がありながら、それを問題とせずに使用するためにチョコ停が頻発するケース
・作業者による調整がしにくいため、その結果として、チョコ停が発生するケース
 などがある。これらのケースは、製品設計や設備設計時に十分検討すべき課題なのである。そこで、設計上の弱点は何かを十分見極め、対策を打つ必要がある。

弱点対策とMTBFの延長

 対策に際しては、調整が非常にしにくいため、新たにチョコ停が発生する場合がある。そのため、作業性、操作性、保全性なども考慮し検討する必要がある。
 また、チョコ停ゼロを維持しやすくするため、各部品の寿命(交換や整備、清掃など)を把握し、MTBFの短いものは、延長を検討しなければならない。単に材質を変更したり、構造を変えるのではなく、機構を理解し、ストレスのかかり方、動きのメカニズム、環境などを考慮したうえで、改良にあたることが重要である。

弱点対策は手順を踏んで

 弱点対策は、これまでのステップどおりに手順を追って実施する必要がある。しかし、その手順を踏まず直接弱点研究を行っても失敗するケースがある。それは前述のさまざまな要因が絡み合ったままの状態、つまり復元すればなくせるにも関わらず、それをせず設計上の弱点対策を行うというパターンである。
 要因が混然とした状態では、設備上の真の原因絞りきれず、弱点改善したつもりが、弱い部位を移動させるだけという改悪になってしまう場合が多い。

著者プロフィール

TPMコンサルティング事業本部 顧問
和泉 高雄(いずみ たかお)

1984年 日本能率協会(JMA)入職。日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て、2013年にJMAC取締役、19年から現職。国内外の工場・ものづくりの現場のコンサルティング、審査は100社以上。専門分野のPM分析、個別改善、自主保全、品質保全に加え、TPM全般の教育にも定評がある。共著に『TPM展開プログラム・加工組立編』『PM分析の進め方』(いずれもJIPM)、編著に『チョコ停改善はこうやれ!』(JMAC)、雑誌への寄稿および講演多数。全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC16007)、国際公認経営コンサルティング協会認定コンサルタント(CMC)、TPM Award審査委員。早稲田大学理工学術院非常勤講師。

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