【第7回】チョコ停の捉え方⑤
チョコ停の評価尺度
無人運転を指向するとき、目論見どおりできるのか心配になるときが多いだろう。たとえば、対象自動化設備を昼休みに無人運転したい、また夜間の限定時間に無人化・無人運転を行いたいが、どの程度期待できるのかという疑問が生じる。なぜなら、たった1回のチョコ停のために計画した生産がゼロになってしまうこともあるからである。
このような疑問に答えるためにも、チョコ停の評価尺度が必要となる。そこでチョコ停の評価尺度として、チョコ停MTBF(分)とチョコ停MTBF(サイクル)を紹介する。この尺度を用いて、無人運転化へのレベルを知るとともに改善目標の設定や改善活動の評価にするとよい。
チョコ停MTBF(分)
MTBF(Mean Time Between Failures)とは、平均故障間隔のことで、
MIBF=T/r
T:対象設備の期間中の総動作時間
r:対象設備の期間中の総故障回数
で計算する。
チョコ停MTBFとは、このMTBFを転用したものである。
チョコ停MTBF=動作時間(オペレーティングタイム)/チョコ停回数
となる。
データの取り方は以下のとおり。
・1週間のチョコ停MTBF=1週間の動作時間(T)/1週間のチョコ停回数(r)
・1ヵ月のチョコ停MTBF=1ヵ月の動作時間(T)/1ヵ月のチョコ停回数(r)
たとえば、チョコ停MTBF(分)が200分といえば、無人運転(ノントラブル時間)が平均200分可能であることを示している。
動作回数でとらえるチョコ停MTBF(サイクル)
設備のサイクルタイムが異なる場合は、チョコ停MTBF(分)でとらえても設備ごとのレベルはつかめない。そこで、チョコ停MTBF(サイクル)を用いる。
チョコ停MTBF(分)=200分といっても、
① 1サイクル0.3秒の高速設備では、40000サイクルに相当する。
② 1サイクル1.2秒の設備では、10000サイクルに相当する。
③ 1サイクル60秒の設備では、200サイクルにしか相当しない。
そこで、
チョコ停MTBF(分)
=動作時間/チョコ停回数=実際サイクルタイム×加工数/チョコ停回数
をサイクルに変換し、
チョコ停MTBF(サイクル)=動作サイクル数/チョコ停回数
=動作時間/実際サイクルタイム/チョコ停回数
=加工数(サイクル数)/チョコ停回数
としてとらえる。
計算例
計算例として、実際サイクルタイムは0.8秒で400個加工し、その間にチョコ停が40回発生したとする。そのときのチョコ停MTBFを求めると、
チョコ停MTBF(分)=実際サイクルタイム×加工数/チョコ停回数
=0.8分/個×400個/40回=8分
チョコ停MTBF(サイクル)=加工数(サイクル数)/チョコ停回数=400サイクル/40回=10サイクル
となる。
これらの指標を使い、改善の目標や製造現場への新規設備の引渡し基準のひとつとして活用するとよい。
TPMコンサルティング事業本部 顧問
和泉 高雄(いずみ たかお)
1984年 日本能率協会(JMA)入職。日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て、2013年にJMAC取締役、19年から現職。国内外の工場・ものづくりの現場のコンサルティング、審査は100社以上。専門分野のPM分析、個別改善、自主保全、品質保全に加え、TPM全般の教育にも定評がある。共著に『TPM展開プログラム・加工組立編』『PM分析の進め方』(いずれもJIPM)、編著に『チョコ停改善はこうやれ!』(JMAC)、雑誌への寄稿および講演多数。全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC16007)、国際公認経営コンサルティング協会認定コンサルタント(CMC)、TPM Award審査委員。早稲田大学理工学術院非常勤講師。