【NO.11】ロス別の改善ステップ⑤ 段取りロス(ステップ4〜7)
段取りロスのステップ展開
前回の続きです。今回はステップ4〜7を解説します。
ステップ4:内段取り作業の外段取り化
ステップ3で、ムダ作業を徹底的に排除することにより、余計な作業者の動きがなくなり、動きが小さくなりました。しかし、まだ内段取りでの準備・片付け作業を行ってはいないでしょうか。
ここでは、段取り替え時間を短縮するために、内段取り作業を改善して外段取りで行えるようにし、機械の停止時間を短くしていきます。
これまで段取り替えに手を付けていない職場は、この内段取り・外段取りのルールが明確でないため、大きなロスタイムを生んでいます。逆にいうと、こ
のルールを徹底することにより、大きな効果が期待できます。
(1) 内段取り作業の外段取り作業への移行
① 準備・片付け作業の外段取り化
外段取り化の改善対象のメインとなってくるのは、準備・片付け作業です(下図)。
ステップ4の改善対象範囲
基本的に準備・片付け作業は、設備を止めてからでなければできない仕事は少ないはずです。事前準備または、設備稼動後作業を徹底することにより、内段取り作業を外段取り作業に持っていき、完全外段取り化をねらいとしましょう。
外段取り化検討の進め方は、ステップ2で作成した作業分析において、内段取りで行っている作業1つひとつに対して「R:事前に、または設備稼動後にできないか」と考えます。
- 実際にその作業が本当に内段取りでなければできないか
- 工夫をすれば外段取り化できないか
といった視点で見ていき、改善案を抽出してください。
準備・片付け作業の外段取り化のポイントは、徹底的に、
- 使用するものは前もって準備する
- 探さない、運ばない、選ばない
- 後片付けは、設備が稼動してから行う
を実施することです。
② 交換、調整作業の外段取り化
交換、調整作業についても改善の着眼点は、準備作業と同様になります。
- オフライン化できないか
- プリセット化できないか
- 事前調整できないか
- より近くに置いておけないか
- 設備から離れないでできないか
といった視点で見ていき、外段取り化を検討します。
このステップ4の徹底具合で、目標を達成できるかどうかが決まると言っても過言ではありません。それほど重要なステップですから、妥協せずに進めてください。
ステップ5:内段取り作業の効率化
ここまで改善を進めると、交換、調整作業といった必要な内段取りしか残っていないはずです。しかし、その内段取り作業の中にも、まだまだ改善の余地があります。この段階で既に目標を達成した場合も、さらに改善に取り組みましょう(下図)。
ステップ5の改善対象範囲
(1) 交換作業の効率化
交換作業の効率化は、取付け、取外し作業のすべてに対し「C:少なくできないか」「S:簡単にできないか」と考えます。簡易化のポイントは、着脱の改善です(下図)。
交換作業の簡易化の進め方は、現状内段取りで行っている取付け、取外し作業の作業性、着脱において使用する工具、治具、締付け具1つひとつに対して、
- ボルトの本数を減らせないか
- ボルトやスパナを使わない締付け方法にできないか(レバー式クランプ、エアクランプ、油圧クランプなど)
- 回り込み作業をなくせないか
- 締結部の高さを統一できないか
といった視点で見ていき、改善案を抽出してください。
簡易化のもう1つのポイントは、作業分担と並行作業です。大型設備、ラインの交換作業では、前後、表裏、上下を動き回りながら作業をすることが少なくありません。そのようなときには、歩行のロス削減を考え、複数人で作業配置分けをして作業を行うことも考えてみましょう。
また、1人で作業を行うより、複数人で並行して行う方が当然それに要する時間は短くなるので、内段取り作業そのものが短縮されます。並行作業とは、その効果をねらった作業方法です。
ただし、並行作業を行うときは、作業者の作業バランスを取ることが大切です。人を増やしても、ほとんど手が空いている状態では時間短縮になりません。連合作業分析(マン−マンチャート)を使用し、手待ちのない作業をつくりあげましょう。
(2) 調整作業の効率化
調整作業の効率化では、調整の排除を考え進めていきます(下図)。
調整作業の改善
調整は、正確な基準設定を行っていないために発生する手直しや、やり直し作業です。逆に考えると、基準設定をきちんと行えば「調整を排除できる」ということになります。調整作業の効率化は「E:調整の排除、つまり調整レスを考えます。
① 基準の統一
品種ごとに変わる寸法や位置、高さなどの基準を統一できないか検討します。すべての品種に対し、基準を合わせるのが難しいようであれば、ブロックやスペーサーを用いて一定にします。
② 位置決めの改善
基準設定を整備した上で「突き当てガイド、ブロック、ピンなどを用いて、一発で位置決めできないか」「ワンタッチセットできないか」「目盛りを見る作業をなくせないか」などを検討します。
ステップ6:外段取り作業の効率化
ステップ5まででは、内段取り作業を徹底的に効率化して機械の停止時間を短縮してきました。ここまで進めてくると、段取り全体の作業工数が気になってきます。今まではロス・ムダを含んだままの内段取り作業を外段取りへ持っていったため、外段取り作業にはロス・ムダがまだ残っています。そこで「外段取り時間の短縮」が必要になってきます(下図)。
ステップ6の改善対象範囲
改善の進め方については、外段取り作業の作業分析を行い、その結果に基づいて作業改善(ムダの排除)を実施します。
ステップ7:段取り替え基準化と維持管理
改善活動は実行することが第一ですが、実行した効果を維持していくことも同等に重要です。
時間が経つに連れて効果が元に戻ってしまうのでは、せっかく行った改善が無になってしまいます。したがって、改善活動は作業を標準化し、繰返しの作業ができるようになるまで訓練を実施し、ようやく完了となります。
段取り替えの基準化と維持管理は、
- 段取り替え作業手順書および段取り替え作業基準書の作成
- 訓練の実施
- 維持管理
の手順で進めます。
次回はチョコ停ロス改善のステップを詳しく解説します。
●著者プロフィール
大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)
日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント
日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。
鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)
日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント
大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。