【NO.12】ロス別の改善ステップ⑥ チョコ停ロス(ステップ1〜2)

チョコ停ロスとは

 設備が自動運転中に突然停止する故障のうち、オペレーターが容易に復帰できる故障をチョコ停といいます。チョコッと停止することから、このように言われています。

 チョコ停ロスとは、この部品交換を伴わない設備の一時停止の時間ロスのことです。1回当たりの停止時間や復旧時間が短いのでさほど重要視されず、ロスが放置されていることも少なくありません。しかしこのわずか数秒の復旧作業が、積もり積もれば大きなロスになります。

 また、自動運転設備の無人運転を困難にする最大の要素にもなっており、放置しているとオペレーターの掛持ち台数の増加もできません。逆に考えると、チョコ停解除のために余分な人員配置がなされているわけで、直労生産性の低下要因にもなっています。

チョコ停ロス改善のステップ展開

 下表に、チョコ停ロス改善のステップ内容を整理します。

ステップ 項 目 活動内容

ステップ1

チョコ停の現状把握

・チョコ停データの層別
・改善目標の設定
・サブテーマの設定

ステップ2

微欠陥・不具合の摘出と復元

・職場の決め事状態の確認
  ☑︎基本条件が守られているか
 ☑︎点検項目が守られているか
 ☑︎劣化を放置していないか
・あるべき姿への復元
・結果の評価

ステップ3

現象の分析

・発生状況の調査
・発生メカニズムの検討と不具合の洗い出し

ステップ4

対策と結果確認

・復元の実施
・弱点の改善
・結果の確認

ステップ5

最適条件の検討

・設計上の条件との比較
・基準・標準類の改訂

ステップ6

条件改善

・「少・長・短」活動

ステップ7

条件管理

・点検チェックシートの改訂
・傾向管理の実施



ステップ1:チョコ停の現状把握

 チョコ停ロスは、処置が容易なので問題として顕在化されない傾向にあります。これが大きな問題です。

 具体的にチョコ停改善を進めるときには「設備の停止時間」よりも「停止回数と内容」を把握することが大切です。「どのようなところにどのようなチョコ停がどれだけ発生しているか」をはっきりさせることが改善の第一歩です。

 (1) チョコ停データの層別
 手動でチョコ停の回数を収集する場合は、経験上よく発生している個所の近くに台付きカウンターなどを設置して、チョコ停発生のたびにカウントしていきます。同一個所に複数の現象があり、その現象別にとらえるならば、カウンターを並列に設置します。また、直接設備レイアウト図に、発生のつどシールやマークを貼っていき、データを収集していく方法もあります。自動でデータ収集をする場合は、設備プログラミングのエラーログからデータを抜き取り、積算カウントする方法もあります。

 収集したデータの記録は、設備のレイアウト図をベースにしてチョコ停マップなどを作成し、設備全体の悪さ加減がひと目でわかるようにします(下図)。

チョコ停マップのイメージ

チョコ停マップのイメージ

 たとえば、まず設備別にチョコ停の発生回数をパレート分析し、次にユニット別に分析します(下図)。さらにユニット内のチョコ停現象を層別してマップに表し、管理グラフとして見える化していきます。

パレート分析

パレート分析

 また、製品の品種別、発生タイミング別、作業者別、ライン別といった視点で見るのもいいでしょう。それは、製品・部品の種類によって、あるいは設備やタイミングによって、発生したりしなかったりというパターンが見えてくるからです。

 パターンによって、発生原因が異なる場合も多いものです。発生した状況からチョコ停の特徴をきちんと押さえることも大切です。

 (2) 改善目標の設定
 チョコ停改善の目標を設定します。上位方針からの必達目標や、昼食時間の無人運転化などの具体的な目標があれば、それを目標にしましょう。相対値で見るのであれば、ベンチマーク値の1/20以下が一般的な基準になるので、これを目標にしましょう。

 (3) サブテーマの設定
 マップに表されたユニット別・現象別のチョコ停内容から問題の大きいものを選定し、サブテーマとして設定します。

 サブテーマの目標はゼロです。目標を達成するためには、いくつのサブテーマをゼロにしなければならないかを明確にし、ステップ2以降はサブテーマ単位で進めていきます。このようにサブテーマの改善を繰り返し回すことで、チョコ停改善の目標を達成していきます。

ステップ2:微欠陥・不具合の摘出と復元

 チョコ停は微欠陥が原因となっているものが多く、それらを見つけて対策を打つことが有効です。

 サブテーマとして設定したチョコ停現象が発生する部位周辺について、不具合を徹底的に摘出し、復元を行います。微欠陥を発見するには、まず現状の決め事に不備のある個所を調査することです。

 (1) 職場の決め事状態の確認
 点検基準や段取り基準などからチョコ停に関連する守るべき項目(決め事)を洗い出し、それらの状態を確認していきます。

 ① 基本条件が守られているか
 現場の基本条件(清掃・給油・増締め)が、十分行われているかどうかを確認します。この基本条件が維持徹底されていないために、チョコ停が発生している場合も少なくありません。清掃が十分にされていない、ガタ・ゆるみが放置されているといった状態であれば、それらが引っかかりや誤検知などの原因になる場合が多くあります。

 ② 点検項目は守られているか、劣化を放置していないか
 シリンダーの圧力、ガイドの変形、ストッパーの摩耗、きず、ズレ、接触不良などが放置されていれば、タイミングのズレ、詰まり、転倒、はさまれといった問題にもつながります。現場の決め事を徹底して確認し、不具合を見つけましょう。

 決め事の状態確認を行う際には、ほかに問題がないのかについても合わせて確認します。たとえば、ワークの接触面に関連する各部品・治具の微欠陥を徹底して発見していきます。微欠陥もチョコ停の発生原因に関係している場合が多いのです(下図)。

現象と原因の分類

現象と原因の分類

 (2) あるべき姿への復元
 発見した微欠陥(不具合)は、あるべき姿へ復元を行います。設備の維持ルールをつくったときにはチョコ停はなかったはずです。設備をチョコ停が起きる前の良い状態に戻しましょう。

 (3) 結果の評価
 あるべき状態に戻すことによって、結果がどうなったか確認します。



次回はステップ3〜7を解説します。


●著者プロフィール

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。



鐘ヶ江

鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。

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