【NO.8】ロス別の改善ステップ② 設備の効率化を阻害するロス

設備の効率化を阻害するロスとは

 設備をもっとも効率的にするということは、設備の持っている機能や性能を最高に発揮させることです。逆にその機能や性能を最高に発揮させていない時間は、すべて設備の効率化を阻害するロスとなります。

 作業工数のロスは発生内容により大きく3つに分けられ、さらにその中に具体的な問題となる8つのロスがあります(下図)。

設備の効率化を阻害するロス

 (1) 停止ロス

 停止ロスとは、設備を動かしたくても動かせない問題が発生することによる時間的なロスです。その問題とは、設備故障による停止時間の「故障ロス」、段取替えに伴う設備停止の「段取り・調整ロス」、砥石などの交換時間の「刃具交換ロス」、通常運転に入るまでの慣らし運転などによる「立ち上がりロス」になります。

 これらは、現場が記録する日報などのデータから把握できる顕在ロスです。現場でロスをきちんと定義し、ロスを測定する習慣付けが大事になります。

 (2) 性能ロス

 性能ロスとは、設備の持っている本来の生産能力に対して、実際の生産能力が劣っていることにより発生する効率低下のロスです。

 性能ロスには、日報などには記録されないような簡単に復旧できるトラブルによる設備が停止や、空転することにより発生する「チョコ停・空転ロス」、設備の設計スピードに対して実際に動いているスピードとの差から生じる「速度ロス」があります。

 性能ロスは現場での把握が困難で、一般的には潜在化しています。そこで、計算で算出することになります。

 (3) 不良ロス

 一般に不良ロスといえば、不良をつくったことによりムダとなった原料費・材料費と考えがちですが、設備のロスでは、良品にならず不良をつくってしまった時間的なロスをいいます。不良をつくったことによる原料費・材料費のロスについては、材料ロスで考えます。

次回は故障ロス改善のステップを詳しく解説します。


●著者プロフィール

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。



鐘ヶ江

鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。

次へ 

軸受編:【第9回】軸受の種類と特徴

 前へ

潤滑・給油編:【第8回】潤滑油の劣化診断