【NO.13】ロス別の改善ステップ⑦ チョコ停ロス(ステップ3〜7)

チョコ停ロス改善のステップ展開

前回からの続きです。今回はステップ3〜7を解説します。

ステップ3:現象の分析

 ステップ2でも解決できなかったチョコ停は、いくつかの原因が重なって発生している慢性的な問題である可能性も高いと考えられます。そこでステップ3では、再度よく発生状況の現象の実態調査を行い、現象について原理・原則で考えて要因を洗い出します。

 (1) 発生状況の調査
 チョコ停現象を正しく把握する場合には、ビデオ(動きが早い場合は高速ビデオ)をチョコ停発生個所に設置して回しっ放しにしておくと、発生の瞬間が見てわかるので効果的です(下図)。

チョコ停の発生状況

チョコ停の発生状況

 運悪くチョコ停発生の瞬間が押さえられなくても、チョコ停の1歩手前のような状態は映っているでしょう。ワークの挙動(動き、姿勢、角度、浮き、振動)や設備側の各部位の動き(ワークと接触するときのタイミング、スピード、衝撃、振動、停止位置のバラツキ、ワークと接触する角度など)から見て、チョコ停の発生メカニズムを推測することも可能です。

 (2) 発生メカニズムの検討と不具合の洗い出し
 チョコ停の発生状況を確認できたら、現象、ワークの挙動、設備の動きから見てチョコ停の発生メカニズムを解明し、原因を突き止めます。発生メカニズムは、簡単な絵を描いてみるとよいでしょう(4コママンガをお勧めします)。そこから関係する部品を抽出し、不具合点を現場・現物で調査・対策します。

 それでもチョコ停がゼロにならない場合は、チョコ停発生原因が複雑にからみ合っているか、複数あると考えられます。その際は、PM分析やなぜなぜ分析を活用します。チョコ停現象を原理・原則で考え、なぜそうなるのかというメカニズムを明確にし、不具合と思われる要因を洗い出します。

ステップ4:対策と結果確認

 ここでは、ステップ3の分析で見つけた不具合と思われる要因に対して、次の3つのことを実施します。

 (1) 復元の実施
 慢性的な問題は原因をはっきり断定できません。そこで重要になるのが、考えられることすべてに手を打つことです。
 ここでは、ステップ3の調査で不具合となったものすべてに対して対策を打ちます。不具合については、まず徹底的に復元を行います。

 (2) 弱点の改善
 対策によっては、いったんチョコ停が減ってもしばらくするとまた再発する、明らかに摩耗が早い、設備への負荷が明らかに大きいという場合があります。

 これらは設備の機構・部品材質・形状・治具の構造・形状、検出システム(センサー、システム自体)などの弱点に起因するものと考えられます。そこで、長寿命化や高強度化の改善を検討します。

 (3) 結果の確認
 分析で洗い出された要因は、復元や改善によって効果が現れているでしょうか。サブテーマのチョコ停の発生頻度が下がったか、またはゼロになったかについて、ステップ1で作成したチョコ停マップなどの日々の管理グラフで確認します。

 ここで気をつけなければならないのは、新たな現象が出ていないか、つまり改善などの副作用はどうかという確認です。
 改善結果が満足な状態ならば次のステップに進みます。しかし、チョコ停が撲滅できていない場合は、再度分析に戻って、要因洗出しの漏れの確認や許容値の甘さの見直しなどを行います。

ステップ5:最適条件の検討

 ステップ5では、チョコ停が起きない状態を維持するために「最適条件値の見直し」「項目の追加」を行い、基準に反映させます。

 (1) 設計上の条件との比較
 維持すべき項目や基準値を明確にするにあたり、現状の設備・治工具を前提として、部品・ユニットの取付け条件、加工条件、使用条件を把握します。さらに、設計上の条件と比較したうえで、最適条件値の見直しを検討します。

①取付け条件:部品の取付け位置、角度など、取付けに関連するもの
②加工条件:エア圧、真空度、振幅、供給量など、加工の物理的特性値
③使用条件:適正使用範囲に関するもの

 現状の条件は過去の経験で決められているものが多く、本当に最適なのかはわかりません。したがって取付け条件、加工条件の見直しを、実験的・試行錯誤的に再検討する必要があります。

 (2) 基準・標準類の改訂
 維持すべき項目と最適条件を設定したら、それらを維持するのは現場か保全かを明確にし、自主保全基準書や保全カレンダー、作業手順書や段取り作業標準書へ反映させます。

ステップ6:条件改善

 条件改善とは、チョコ停が起きない良い状態を、維持しやすくするための改善を実施するステップです。今までより維持管理項目が増え、それに費やす時間が多くなる場合もあります。「やりにくい、わかりにくい、コツがいる」といった問題であれば、点検道具の工夫や目で見る管理、スキルアップ訓練などによって、誰でも守れるようにする改善が必要です。

ステップ7:条件管理

 ステップ6の条件改善活動によって、維持しやすい管理ができるようになりました。そこで次に、変動する点検項目に重点を当てて傾向管理を進めます。

 チョコ停発生を予知するためには、何の条件項目を管理しておけばよいかを検討し、抽出された条件を定期的に測定します。劣化の傾向を把握していくことにより、チョコ停発生の予知に結び付け、無人化運転の時間延長をねらいます。



次回は「速度低下ロス」を解説します。


●著者プロフィール

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。



鐘ヶ江

鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。

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