【No.4】ロス改善の進め方① ねらいを知る

 ロス改善の進め方として理解しておきたいのが改善ステップです(次回で詳しく解説します)。基本的な流れは、

現状把握 → 目標設定 → 要因分析 → 対策実施 → 効果確認

という一連の流れになります。すでにいくつかの改善を経験している人には、ごく自然にイメージできるのではないでしょうか。ここではまず、基本的な流れとしての改善ステップを紹介します。その後の回でロス別の改善ステップを解説します。

 改善ステップ(手順など)は、書籍などで数多く紹介されています。これには千差万別あって、一概にどれが正しいとは言えません。また、それぞれのステップを比較してみると、多少並び方に前後はあっても、共通する項目が多いものです。そこで、改善ステップを使用する際には、わかりやすく、使いやすいものを選定しましょう。

 下図に、一般的な個別改善のステップを紹介します。もちろん、自職場や自工場にあったステップにアレンジしてもかまいません。改善の実績や経験を積みあげながら、自職場や自工場に合うオリジナルのステップを作成してみてください。

個別改善の7ステップ展開(実施段階)
ステップ 項目 活動内容

ステップ1

改善テーマおよび目標の設定

・現状の調査結果をもとに改善テーマを選定する

・ロスゼロの考え方で挑戦的な目標および期間を設定する

・ロス別の担当者を決める

ステップ2

改善計画の立案

・解析、対策立案、改善実施などの手順、日程の推進計画を作成する

・トップ診断を行う

ステップ3

現象観察、原因解析および対策立案・評価

・改善のための現象観察、原因解析、調査、実験などあらゆる技法の活用と固有技術を発揮して改善案を立案し、評価する

・目標達成まで改善案を追求する

・トップ診断、発表会などで充実を図る

ステップ4

改善の実施

・対策立案に基づいて対策を実施する

・必要な場合は予算措置を行う

ステップ5

効果の確認

・改善実施後、ロス別に効果の確認をする

・効果が不十分な場合には、第3ステップに戻って改善計画を見直す

ステップ6

歯止め

・技術的対策(後戻り防止のための物的対策)をしっかり行う

・作業標準、保全標準などの必要な標準化を行う

・再発防止のための教育を行う

・トップ診断を行う

ステップ7

水平展開

・同種のライン、工程、設備に水平展開する

・次のラインを選び、改善活動を展開する


 以下に、改善ステップを活用するねらいをまとめました。

(1)進め方の共有化と共通認識

 ステップ表に沿って改善活動を進めることにより、進め方や方向性を共有化できます。たとえば、現状把握はどのレベルまで行うのか、目標設定はどうするのかというように、単なる実施項目内容の理解ではなく、そのために何をするのかを理解することができます。

(2)スケジュール作成や進捗管理

 ステップ表に基づいて、日程計画やスケジュールを作成することで、大まかな改善実施時期や改善効果の刈取り時期の目安ができます。また、ステップの実施時点や完了ステップを確認することで、改善活動の進捗管理として活用できます(下図)。

進捗管理の例

進捗管理の例

(3)役割分担の明確化と人材育成

 実施項目によって必要なスキルを持った人を選定したり、スキルトレーニングを目的として役割分担する場合に活用できます。

(4)ナレッジの蓄積・活用

 改善事例を社内、グループ内のナレッジとして活用する際に、ステップに沿ってまとめ、蓄積することで共通性が生まれ、改善が参照しやすくなります。たとえば、ステップ1〜7をA3横1枚にレイアウトして報告してもらい、改善情報を蓄積しているところもあります(図表2・3)。

改善シートの例

改善シートの例

(5)改善教育に活用

 ステップ表を活用することで、改善教育用に活用しやすくなります。まれに、改善ステップを後付け(改善実施後)で作成している場合を目にします。たとえ後付けであっても、整理することで今後の改善に役立つのであるならば、これも大いに結構です。しかし、報告のための資料まとめというように、今後に活かせない性質のものならば、改善活動のマネジメントそのものに問題があると判断されるので注意してください。

次回は改善ステップの各ステップ(全7ステップ)を取り上げます。


●著者プロフィール

大塚

大塚 寛弘 (おおつか のぶひろ)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部トータルコストマネジメントユニット
プロセス・デザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター チーフ・コンサルタント

日本プラントメンテナンス協会入職後、主に金属製品製造、電気・電子部品製造、輸送用機器、食品・飲料、製薬・医薬、製紙などの生産性向上、コスト低減、品質向上のテーマに取り組む。現場目線と経営目線の両面でのコンサルティング支援を行う。国内および海外の支援企業多数。現在はTPM全般、原価管理/原価低減、品質改善、IE、工場レイアウト計画、購買・調達など幅広いテーマに取り組んでいる。



鐘ヶ江

鐘ヶ江 克則(かねがえ かつのり)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 プロダクションデザイン革新センター
兼 設備管理イノベーションセンター センター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 スマートファクトリー推進室 チーフ・コンサルタント

大学卒業後、電気メーカーの生産技術者を経てJMACのコンサルタントに。生産戦略、生産方式、設備管理を専門領域とし、国内・海外の製造業において生産性改善、コストマネジメント、不良削減、在庫削減、リードタイム短縮など数多くのプロジェクトを支援。 現在、高度設備保全技術の研究及び設備保全業務のDXについて取り組んでおり、関係執筆も多数。

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