ヒューマンエラー対策に「なぜ?」を活用する!
人はエラーやミスを犯すものなので対策は不可欠
ヒューマンエラーとは、人為的なエラー(過誤)やミス(失敗)のことです。JIS Z8115:2000では、「意図しない結果を生じる人間の行為」と規定されています。エラーやミスを犯さない人間はいないので、ヒューマンエラーをできる限り起こさないようにする予防策や対応策を実践する必要があります。
生産現場における人の行動を起因とするヒューマンエラー対策として、以下のようなものが多く用いられています。
- 危険予知トレーニング (KYT)による訓練
- 指差呼称による確認
- チェックリストによる漏れ防止
また、設備を起因とするヒューマンエラーを防ぐために、以下のような物理的な対策も取られています。
- 安全カバーや安全柵などによる防護
- ポカヨケによる作業ミスを物理的に防止する仕組み
- フェイルセーフによる設備の誤動作・誤操作時の安全確保
いずれも長く取られている対策であり、非常に大切な取り組みであるといえます。
「あるべき姿」からヒューマンエラーの原因を追求する
ヒューマンエラーの原因を追求することが、その予防・対策には欠かせません。原因追求の観点としては、4M(Man、Machine、Material、Method)や固有技術(スキル)、原理・原則などがあげられますが、「あるべき姿」から行うのが基本といえるでしょう。そこで有効となるのが、多くの生産現場で活用されている「なぜなぜ分析」における「なぜ?」の観点です。
「なぜなぜ分析」のアプローチには、「あるべき姿」からと「原理・原則」からの2つがありますが、この「あるべき姿」からのアプローチは“狭い範囲の不具合や、一部の要因は特定できている不具合に対して、更に突っ込んで要因の抜けを追求し、再発防止したい場合に適用する”というものなので、ヒューマンエラーの原因追求に適しているのです。
“うっかり型エラー”につながる記憶・認知・判断・行動のエラーがないか、“あえて型エラー”につながる違反やリスクテイキングを行っていないことを、あるべき姿の観点として追求します。そして、そこから4M面の不具合を広く深く見つけていくので、抜けのない対策に結び付けていくことができます。
ヒューマンエラーを起こした個人を対象とするのではなく、仕事の仕組みのまずさを対象として改善していくことが大切なのです。
▲ヒューマンエラーを追求する「あるべき姿」の観点
藤井 雅司プロフィール
◆専門分野:生産技術支援
◆TPM:個別改善、自主保全、品質保全
大手総合化学会社で工場内電気設備管理、システム設計・プログラミング業務等に従事後、大手半導体製造会社でTQC推進、QC教育、地区QCサークル活動幹事、TPM優秀賞・継続賞等のTPM推進、JIT生産推進に携わる。コンサルタントに転身後も、多くの業種・業態におけるTPM推進支援に加えて、書籍「『8の字展開』で進める品質保全」執筆のほか、「なぜなぜ分析」「PM分析」「QC手法」をはじめとする社内教育や公開セミナー講師でも非常に高い評価を得ている。
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