【第5回】チョコ停の捉え方③
チョコ停ロスの一般的課題
ロスとしての顕在化が不十分
チョコ停は1回当たりの処置が簡単でも、発生回数が多い場合にはそのロスが及ぼす影響は意外に多いものである。また、発生回数は少なくても、その発見が遅れた場合には大きなロスとなる。こうしたロスの大きさに気がつかないでチョコ停を放置している場合が多いので、問題が問題として顕在化されていない。そうしたチョコ停の問題を明確にするには、その定量的な把握が必要であり、先決である。
対処の仕方が悪い
チョコ停の低減に対する対応の仕方が悪く、表面的な見方しかしないため、その場限りの応急処置に終始し、中途半端な部分的な対策しか行っていないケースが多々見られる。そのため、根本対策ができず、対症療法になり、再発を繰り返している。
現象の見極め方が不十分
チョコ停を分析する場合、もっとも重要なことは現象を充分認識し、しっかり観察することである。しかし、現場で確認しようとしても、なかなかその場に立ち会うことができない。また、その場に立ち会ったとしても発生のスピードが速く、その瞬間を捉えることができない場合が多い。
以上のことにより、チョコ停は慢性化することが多い。言い換えれば、チョコ停をロスとして正しく認識し、現象を確実に観察するとともに、真因を洗い出し、潜在欠陥を顕在化し、顕在化された欠陥をすべて対策することを行えば、チョコ停ゼロが実現できるのである。
無人運転のための解決すべき必須課題
チョコ停が発生すると、以下のような問題が起こる。
- 自動ラインで設計時の見積もり人員では、トラブル処理に追われ、所定の稼動率が達成できないため、余分に人員配置をし、稼動率や出来高を維持している
- 持ち台数を増やすことができない(計算上15台持ててるのに10台しか持てない)
- 昼休み無人運転を行っても、1回のチョコ停のために、十分な効果が得られない
- チョコ停のために不良・手直しが減少しない
- 手動運転(ワークの脱着と起動)から自動化ラインへ移行するにあたり、自動時間、無人時間の延長を図るときに残る問題が、ツール寿命とチョコ停になる。品質的にはCp値(工程能力)が高く、故障もない状態で運転したとしても、たった1回のチョコ停で連続生産できなくなってしまう。夜間無人運転、週末無人運転などを目指すには、チョコ停を撲滅するか、自己復旧機能を付加しなければならない
TPMコンサルティング事業本部 顧問
和泉 高雄(いずみ たかお)
1984年 日本能率協会(JMA)入職。日本プラントメンテナンス協会、JIPMソリューションを経て、2013年にJMAC取締役、19年から現職。国内外の工場・ものづくりの現場のコンサルティング、審査は100社以上。専門分野のPM分析、個別改善、自主保全、品質保全に加え、TPM全般の教育にも定評がある。共著に『TPM展開プログラム・加工組立編』『PM分析の進め方』(いずれもJIPM)、編著に『チョコ停改善はこうやれ!』(JMAC)、雑誌への寄稿および講演多数。全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント(J-MCMC16007)、国際公認経営コンサルティング協会認定コンサルタント(CMC)、TPM Award審査委員。早稲田大学理工学術院非常勤講師。